藻類・菌類・植物命名規約と動物命名規約のおもな相違点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 21:17 UTC 版)
「国際動物命名規約」の記事における「藻類・菌類・植物命名規約と動物命名規約のおもな相違点」の解説
前述のように、命名規約は大まかな方針では一致するものの、細部には多くの差異がある。参考までに、国際植物命名規約(藻類・菌類・植物命名規約の旧称)と国際動物命名規約の相違を、対応する規約の条項と共にいくつか挙げた。以下の略号は各規約の対応条項を示す。 (ICBN 1.23.):国際植物命名規約セントルイス規約・第1.23条 (ICZN 1.23.):国際動物命名規約第4版・条1.23. 些細なことであるが、条文「1.23.」を植物では「第1.23条」、動物では「条1.23.」と読むのも相違点の一つである。 反復名の取扱い 反復名 (tautonym) とは、種小名が属名と全く同じ形の学名である。植物:反復名は禁則であり、属の移動などによって反復名が生じる場合は別の種小名が与えられる (ICBN 23.4.)。ただし植物においても「亜属名と種小名」「属名と亜属名」が同じものは許容される。もちろん「属名と亜属名と種小名」が同じでは反復名なので不可。 動物:反復名は何ら問題ではないことが明言されており (ICZN 18, 23.3.7)、実際に多用されている。例:Pica picaカササギ Gorilla gorillaゴリラ など 献名された属名 植物:人名に献名した属名を作る場合には、その人物が男性・女性に拘わらず女性形にすることが望ましいとされる (ICBN 20A.1.)。 通常は語尾が "-a" の形となる。例:シンガポールの創設者トーマス・ラッフルズ(Thomas Raffles)に献じられたRafflesia属、スウェーデンの植物学者アンデシュ・ダール(Anders Dahl)に献じられたDahlia属など 動物:特にそのような勧告は存在しない。 種小名の語頭 植物:原則として種小名およびそれ以下の階層の語は小文字で始まるべきだが、人名・地方語名・かつての属名に直接由来する場合には大文字で書き始めてもよい (ICBN 60F.1.)。 動物:種小名と亜種小名は例外なく小文字で書き始めなければならない (ICZN 5.1., 28)。 科・属・種・亜種より上の分類群 植物:亜連(動物でいう亜族)より上位の各分類群名に対して使用すべき語尾が指定されている (ICBN 16.1., 16A1.-3., 17.1., 18.1., 19.1.-3.)。 動物:上科から亜族までは使用すべき語尾が指定されているが、それより上位の分類群名に対して指定はない (ICZN 29.2.)。 科・属・種・亜種より下の分類群 植物:亜種より下位に変種・品種(動物でいうところの型)を認めている (ICBN 4.1.)。また、雑種についても規約内で扱われる (ICBN 3.2., H1~12)。 動物:新規約に伴い、亜種より下位の分類群(変種・型)と雑種に関しては規約の適用外となった (ICZN 45.5.)。具体的な例として、A氏が "Xxx yyy var. aaa" と名付けた変種がB氏によって亜種に相当すると判断され "Xxx yyy aaa" と昇格されるとき、命名者はA氏ではなくB氏となる。さらに先取権の原則も適用されないのでB氏は"aaa"を無視して"Xxx yyy bbb"と名付けてもよい。 記載の言語 植物:新種(それ以外の新分類群も)の設定には、ラテン語で記述された記載文・判別文がなければ正式に発表したとは見なされない (ICBN 36.)。1996年1月1日以降発表の化石植物のみ「ラテン語か英語」とされている (ICBN 36.3.)。 動物:一般勧告において「広く通用する言語で書かれた要約を掲載するべき」であると言及するのみ。 付帯記号除去の方法 植物・動物とも、命名の基となった言語で使用されているアクサン、チルダなどアルファベットに付帯している記号はそれを取り除くことになっているが、以下の文字に関してはその換字方法に差異がある。 ICBNICZNä, ö, üae, oe, ue(1) a, o, u(2) è, é, êe (ae) e øoe o åao a (1) 分音記号(トレマ)の場合はそのままä, ö, üと記す。学名に許される唯一の付帯記号。 (2) 例外として、1985年より前に公表された学名ではae, oe, ue, とする。
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