茶
『茶の湯』(落語) 根岸に住む隠居が、茶の湯を始めようと思うが、子供の頃に習ったきりだから、何もかも忘れている。「茶碗の中へ入れる青い粉・・・何だったかな?」と首をかしげると、小僧の定吉が心得顔に青黄粉(あおぎなこ)を買って来る。茶筌でかき回しても泡が立たないので、椋(むく)の皮を茶釜に放り込み、盛んに泡だてる。茶席に招かれた近所の人たちは、青黄粉と椋の皮を煎じたものを飲んで生きた心地もなく、口直しに羊羹を食べて一息つく。
『不審庵』(太宰治) 黄村(おうそん)先生が茶の湯を始めた。今年の夏、「私」は茶会に招かれ、黄村先生の弟子の文科大学生2人と一緒に、先生の家へ行った。壊れかけの七輪が3畳間に置いてあり、煤(すす)けたアルミニュームの薬罐(やかん)がかかっている。ふんどし1つの黄村先生が、茶筌で薄茶を懸命にかき回すが、どうしても泡が立たず、茶会は失敗に終わった。数日後、黄村先生から「茶の湯は要(い)らぬ事で、喉が渇いたら、水甕の水を柄杓でごくごく飲むのが一ばん」という手紙が来た。
*黄村先生を主人公とする作品は、他に→〔山椒魚〕2の『黄村先生言行録』、→〔歯〕9の『花吹雪』がある。
『不思議の国のアリス』(キャロル) 三月兎の家の前のテーブルで、三月兎と帽子屋がお茶を飲んでいた。2人の間にヤマネ(眠り鼠)がすわっていて、ぐっすり眠り込んでいる。アリスも席に着き、彼らの会話に加わる。「答えのないなぞなぞ(*→〔謎〕5)」や「時間のわからない時計(*→〔時計〕8)」に呆れ、すっかり頭が混乱して、アリスはその場を立ち去る。ふり返ると、三月兎と帽子屋が、ヤマネをお茶のポットに押し込もうとしていた。「あんなばかげたお茶会に出たのは、生まれてはじめてだわ」とアリスはつぶやく。
朝茶の由来の伝説 大蛇が、1人暮らしの老人を呑もうと、様子をうかがう。ところが、老人が「今日も朝茶でも飲むか」と独り言をいったのを、大蛇は「蛇(じゃ)を呑む」と聞き違える。「この老人は毎朝、蛇を呑んでいるのか」と、大蛇は恐れて逃げ帰る。以来、「朝茶は縁起が良い」「朝茶は難を逃れる」などと言われるようになった(埼玉県秩父郡大滝村)。
★4.マテ茶。
『マテ茶の木の起源』(アルゼンチンの昔話) 年老いた男と娘が、農場で寂しく暮らしていた。イエス様が聖パヴロや他の聖人たちと一緒に訪れ、男は一行をもてなして泊めてあげた。男が「年をとったので、働いて娘を育てるのがたいへんだ」と打ち明けると、聖パヴロは「明日、褒美をあげよう」と言う。翌日、聖人の一行が去った後、男は具合が悪くなって「娘よ」と叫んだが、娘は「カア」と呼ばれるマテ茶の木に変っていた。男の死後、娘が1人残されてはかわいそうなので、皆の役に立つ木に変えられたのだ。
『ほうじの茶』(落語) 芸のできない幇間(たいこもち)の一八は、不思議な茶を持っていた。茶を焙じると、一八の代わりの幇間が現れ、舞や浄瑠璃やバイオリン演歌や、いろいろな芸を見せてくれる。若旦那が感心し、真似をして茶を焙じるが、現れたのは幇間ではなく、亡父の霊だった。「茶屋遊びばかりして、先祖の供養がおろそかになっておる」と、若旦那はさんざんに怒られた。お茶をしっかり火で炙(あぶ)らなかったので、焙じ(法事)が足りなかったのだ。
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