舞台の各部分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 07:16 UTC 版)
歌舞伎の舞台を右図にしたがって説明する。なお客席から舞台を見たとき右側を上手(かみて)、左側を下手(しもて)という。 花道は舞台下手から客席を貫いて設けられている通路状の舞台である。正面の舞台は本舞台という。花道は役者の入退場に用いられるばかりでなく、ここで重要な演技も行われる。観客のすぐそばを通ることで役者の存在感をアピールするなどの演出が可能となる。 舞台の両端には大臣囲い(だいじんがこい)があり、下手側の大臣囲いには太鼓などの演奏や長唄、効果音などを演奏するための場所で外側には黒い御簾(みす)がかけられている。この場所を黒御簾(くろみす)もしくは下座(げざ)ともいい、ここで奏でられる音楽を黒御簾音楽もしくは下座音楽という。一方、上手側の大臣囲いの2階は義太夫狂言(=人形浄瑠璃から取り込んだ演目)などで竹本という語り物とその伴奏である三味線を奏でる場所で、床(ゆか)と呼ばれる。大臣囲いの端の柱は大臣柱(だいじんばしら)と呼ばれている。これは現在では単なる柱にすぎないが、歴史的には歌舞伎舞台の先祖である能舞台で屋根を支える柱からきており、歌舞伎においても古くは舞台の屋根を支えるために用いられていた。 花道の舞台とは反対側の端には役者が入退場するための鳥屋(とや)という部屋があり、その入り口には部屋の中を隠すための揚幕(あげまく)という幕がかかっている。また本舞台と揚幕を3:7に分ける場所(実際にはここよりも舞台によった場所)を舞台寄りの七三、7:3に分ける場所を揚幕寄りの七三といい、花道上の演技は多くの場合このいずれかの場所(特に前者)で行われる。舞台寄りの七三にはセリがあり、すっぽんと呼ばれている。すっぽんは妖怪や幽霊などを演じる役者が登場したり退場したりする場合に使われる。花道は通常下手にしかないが、演目によっては演出の都合上、上手側にも花道を仮設する場合があり、これを仮花道(かりはなみち)という。 なお歴史的には七三といえば揚幕寄りの七三のことであったが、大正のころから混同が起こり「七三」という言葉が舞台寄りの七三のことも表すようになった。混同された理由としては、揚幕寄りの七三が2階席から見づらいために演技の位置が舞台よりの七三に移ったこと、無知なジャーナリストが誤用した可能性などが挙げられている。また「鳥屋」という言葉は上方のものであり、江戸ではこの部屋も揚幕と呼ばれた。 日本の家屋は床が地面よりもかなり高いため、舞台でもこの高さを作り出すことが多い。この高さの水準を二重舞台、略して二重といい、そのための大道具類も二重と呼ばれる。高さによって常足、中足、高足などがある。どれを使うかは場面によってだいたい決まっている。 客席の区分と名称については劇場#歌舞伎を参照。
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