結晶工学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/16 16:53 UTC 版)
結晶工学(英語版)は、固体化学と超分子化学を橋渡しする成長研究分野である。このユニークな研究分野は学際的であり、結晶学、有機化学、無機化学などの伝統的な分野を融合させる。1971年、Schmidtは固体における光二量化の論文で初めてこの分野を確立した。より最近の定義では、結晶工学は結晶化や望んだ物理化学的特性を有する新規物質の開発における分子間相互作用の利用と見なしている。ハロゲン結合の発見以前は、液晶や固体結晶材料の開発を目指す結晶工学におけるこのようなアプローチとしては、水素結合や錯体化学、イオン間相互作用を利用していた。さらに、ハロゲン結合は、ラジカルカチオン塩の組織化や分子導体の設計、液晶構造物の作成などに用いられている。ハロゲン原子の発見され、新しい分子集合体が開発されている。ハロゲン結合のユニークな化学的特性のため、この分子間相互作用は結晶工学の発展における補助手段としての役割を果たしている。 液晶形成におけるハロゲン結合の利用に関する初めての論文はH. Loc Nguyenによるものであった。 液晶を形成する目的で、アルコキシスチルバゾールやペンタフルオロヨードベンゼンが用いられた。MetrangoloとResnatiによる以前の研究では、固体構造へのペンタフルオロヨードベンゼンの有用性が明らかになった。様々なアルコキシスチルバゾールは非線形光学およびメタロ液晶物質に利用されている。Resnatiのもう一つの発見(例: N-I複合体が強力に形成される)を用いて、このグループはペンタフルオロヨードベンゼンと4-アルコキシスチルバゾールのハロゲン結合複合体を調製した。X線回折解析の結果、N—I間の距離は2.811(4) Åで結合角度は168.4°であることが明らかになった。同様のN-I間距離は固体粉末でも計測されている。この発見されたN—I間距離は、窒素とヨウ素のファンデルワールス半径の和 (3.53 Å) よりも短い。この分子の単結晶構造は四重極子相互作用が存在しないことを示している。 ハロゲン結合の強度における分極率の関与を調べるため、ブロモペンタフルオロベンゼンがルイス塩基として用いられた。その結果、ハロゲン結合複合体の確証は得られなかった。このことは、ハロゲン結合が原子分極率に依存していることをより支持している。同様のドナー-アクセプター骨格を利用して、著者らは液晶状態でのハロゲン結合の強さが水素結合したメソゲンに匹敵することを証明している。
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