細胞診断の診療報酬(細胞診検査から医行為としての細胞診断への進歩)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/26 19:01 UTC 版)
「細胞診断」の記事における「細胞診断の診療報酬(細胞診検査から医行為としての細胞診断への進歩)」の解説
細胞診検体を用いた検査はほかの検体検査と同じように、臨床検査技師が実施することができる形態学的検査であり、細胞診検査と結果判定は医行為には属さないとされてきた。診断を目的とする細胞診検査が診療報酬点数表上で評価されていなかった。しかし病変部から採取された細胞診検査の結果から病名を判断する細胞診断は医行為である。 2008年と2010年には、細胞診断について診療報酬改正が行われた。2008年4月の診療報酬改正では細胞診は第3部検査から第13部病理診断に移った。2010年の診療報酬改正では第2節病理診断として細胞診断料が新設された。医療費支払い時に受け取る医療費明細書や領収証では、細胞診の料金は病理診断の欄に記載されている。検査の項ではない。 病理診断サービスが充実することを目的に、診断細胞診とスクリーニング細胞診について、さらに診療報酬が整備され、病理医や細胞検査士の評価が改められることが必要となっている。病変部診断を目的として採取された細胞診検体を用いた検査は医行為である。細胞診が病変の判断であるとき、その結果は患者に重大な影響を及ぼす。従って医師ではない臨床検査技師の業務として行われている医行為の事例は不適切と考えることができる。細胞診を巡る臨床検査技師と病理医および細胞診を担当する臨床医の業務分担と責任範囲は改めて明確化する必要が求められている。 検体検査の中に、顕微鏡で観察する形態学的検査という、細胞診に近似した検査項目がある。尿沈渣や血液像などが該当する。形態学的検査は検査室で臨床検査技師が検査を担当することがほとんどで、病理医が検査実施することは少ない。細胞診検体を用いる細胞診検査について,80年代後半頃までは、病理医は興味を持たずやや冷ややかであったので、医師が行う病理診断としてではなく、形態学検査に分類して臨床検査技師が担当してきたともいえる。臨床検査技師が行う検査の判定は病変を判断するわけではないので医行為には属さない。 日本では細胞診検査は子宮頸がん検診の「検査」として発達したが、検体が多いためか、臨床検査技師に一定の教育を行ったうえで、細胞検査士の資格を与え細胞診検査に従事させてきた。陰性またはClassI、IIについては細胞検査士の裁量で細胞診結果を報告し、医師はClassIII、ClassIIIa以上について報告するという分担ができた。産婦人科医に細胞診の知識があり、細胞検査士業務の大部分が婦人科細胞診であり、両者がよく連携できていた時代に作られたルールである。子宮頚がんスクリーニング細胞診におけるルールである。 いっぽう、細胞診検査の技術を応用すると、病変部位を穿刺して得られた検体を用いて良性悪性などの病変診断が可能であり、1980年代から各種臓器、各種病変についての細胞診断が盛んに研究開発された。細胞検査士や衛生検査所の果たした役割も大きい。職域を広げ、同時にビジネスを開拓するという意味があり、病理医にとっては時間のかかる割には報われない細胞診検査を細胞検査士にまかせるという意味があった。非婦人科細胞診ではルールがやや曖昧になった。歴史的理由により、日本では細胞診検体を用いた細胞診断結果のうち陰性報告が臨床検査技師の業務となっていることがある。 医療施設によっては病変部の穿刺吸引細胞診の場合でも、細胞診検査士の裁量で陰性の結果が出せる慣わしとなっている。陰性であることは臨床検査技師が行う検査結果であり、陽性であるときは医師が行う診断結果であるという、患者から見て、奇妙な事態である。画像診断である腹部エコー検査において胆嚢炎は検査技師の検査結果であり、胆嚢癌は医師が診断するといっているようなものである。検査結果の判定とはいえ陰性であることはひとつの診断である。病変部細胞診陰性という結果に基づいてその後の治療方針等が決定されるのである。病理医が関与しない病変の判断が存在するという事態は一般にはあまり知られていない。
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