秘密結社と「嵐」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 01:31 UTC 版)
Qアノンの中心的概念は、「悪魔崇拝者・小児性愛者の秘密結社(ディープステートやカバールと呼ばれる)によってこの世界は支配されており、トランプはその秘密結社による悪行を止めようと密かに戦っている。そして、匿名の存在である『Q』は、この裏の戦いに関する詳細をネット上で暴露している」というものである。この秘密結社は、政治家・主要メディア・ハリウッドを支配することでその存在を隠していると考えられている。「Q」による暴露は、秘密結社の崩壊が差し迫っていることを暗示しているが、Qアノンコミュニティを構成する「愛国者」たちの支援によってのみ達成されることも示唆している。秘密結社が崩壊する際には、何千人もの秘密結社メンバーが逮捕・投獄され、米軍が国の支配を取り戻し、地上に救いと楽園がもたらされると信じられており、「嵐」(英: The Storm)や「イベント」(英: The Event)などと呼ばれている。また、Qアノンの思想は、トランプ自身と彼に近い関係者以外の政府高官と政府機関、および主要メディアを拒絶するよう示唆するものとなっている。 Qアノン信者が秘密結社のメンバーであると信じている著名人には、ジョー・バイデン、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントンなどの民主党の政治家、ジョージ・ソロス、ビル・ゲイツなどの実業家、フランシスコ教皇、ダライ・ラマなどの宗教指導者、アンソニー・ファウチ、およびオプラ・ウィンフリー、エレン・デジェネレス、レディ・ガガ、クリッシー・テイゲン(英語版)などのエンターテイナーが含まれる。トム・ハンクスは、Qアノン信者から特に狙われている人物であり、コロナ禍が始まり隔離された際、Qアノンの信者らは「児童虐待容疑でトム・ハンクスは逮捕された」というフェイクニュースを捏造・拡散した。その後も同様の疑惑が続き、2021年7月には「ハンクスは米軍に処刑された」というパロディサイトの記事を真に受けるQアノン信者も現れた。 2020年アメリカ合衆国大統領選挙が行われるまで、Qアノン陰謀論のナラティブの中核を占めていた主要教義の一つは、「トランプが圧勝して再選し、2期目はディープステートを完全に打倒するために費やされ、秘密結社の解体とリーダーの逮捕により『嵐』がやって来る」という繰り返し行われた予言である。トランプが選挙で負けると、「Q」の投稿頻度は急激に低下し、2020年12月8日に最後の「ドロップ」を行った「Q」は完全に投稿を止めた。Qアノン研究者のマイク・ロスチャイルドは、この運動は「新たなドロップの必要性を失っており」、トランプの敗北によってQアノンの核となる予言が外れたため、「Q」が復活することは難しいと述べている。しかし、「コミュニティが前進を続けるために新しいドロップを本当に必要としている」場合は、「Q」が投稿を再開する可能性があると付け加えている。Qアノンの信者らは、古い投稿の中から、これまでに明らかになっていない手がかりを探し続けたり、新しい陰謀論を派生させたりして独自に活動を続けた。その後、信者らは、以下のような「トランプは大統領職に留まる、あるいは政権に復帰する」という内容の複数の予測を立てた。 2021年1月20日に行われるジョー・バイデンの就任式は、民主党に仕掛けられた巧妙な罠であり、トランプが政権に留まっている間に民主党員は一斉に逮捕され、処刑されるという予測。 2021年3月4日にドナルド・トランプが第19代大統領として就任するという予測。これは、「1871年のコロンビア特別区基本法(英語版)によってアメリカ合衆国は法人化された」というソブリン市民運動(英語版)が提唱している陰謀論から派生したものであり、トランプがユリシーズ・グラントに次ぐ第19代大統領として就任すれば、アメリカは法人ではなくなり、再び建国の父が始めた本当のアメリカに戻るという主張がなされている。3月4日が就任日となっているのは、1869年以降の合衆国憲法の修正を陰謀論信者らが認めていないためである。 2021年3月20日にドナルド・トランプが再び大統領に就任するという予測。2021年3月4日にトランプが就任するという予言が外れたため、Qアノンは就任日を2021年3月20日に「延期」した。
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