祖母の前で完全試合達成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/21 03:54 UTC 版)
「ダラス・ブレイデン」の記事における「祖母の前で完全試合達成」の解説
2010年は、4月6日の開幕2戦目でシーズン初登板。この年、ブレイデンはふたつの出来事で注目を集める。ひとつは、4月22日のニューヨーク・ヤンキース戦でアレックス・ロドリゲスのある行為に対して「不文律を守れ」と怒りを露わにしたこと、もうひとつは5月9日のタンパベイ・レイズ戦でMLB史上19人目の完全試合を達成したことである。ブレイデンは「完全試合を達成したことで、ファンや野球界のみんなが僕について語るとき、何かネガティブなことではなく、ポジティブなことを話してくれるようになったのはたしかだね」と話す。 4月22日の試合、6回表一死無走者からロドリゲスが左前打で出塁。次打者ロビンソン・カノがファウルを放ったとき、二塁を回って三塁へ向かっていたロドリゲスは、一塁へ戻る。しかしこのとき、ロドリゲスがマウンドの上を通過していったことにブレイデンが激怒した。カノを併殺に打ち取ってイニングが終了したとき、ブレイデンはロドリゲスを怒鳴りつける。ブレイデンはこの回限りで降板、チームはこの試合に4-2で勝利し、6回2失点のブレイデンは勝利投手に。それでもブレイデンは試合後にも「彼はすごい才能を持った選手だ。だけど、もし俺がサイ・ヤングであろうが25人ロースターにギリギリで残っているような選手であろうが関係ない。俺がボールを持ってマウンドにいる以上は、そこは俺の場所だろ。そんなにマウンドを通りたけりゃブルペンにでも行けよ」と批判し、これに対しロドリゲスは「ちょっと驚いたね。そんな不文律は聞いたことがないし、まさか、これまで数勝しかしていないような投手にそんなことを言われるとは」とコメントした。この是非を巡っては、ドン・サットンが「(ロドリゲスの行為は)やっちゃいけない。9点リードの8回に盗塁するようなもの」とブレイデンを支持する一方、ダリル・ストロベリーは「ロドリゲスとブレイデンじゃ選手として格が違う」とブレイデンを非難するなど、大きく話題となった。 ブレイデンの完全試合 全打席結果一回表 J・バートレット 三直 C・クロフォード 一ゴロ B・ゾブリスト 中飛 二回表 E・ロンゴリア 中飛 C・ペーニャ 一ゴロ B.J.アップトン 見逃し三振 三回表 W・アイバー 見逃し三振 D・ナバーロ 中直 G・キャプラー 左飛 四回表 J・バートレット 三ゴロ C・クロフォード 空振り三振 B・ゾブリスト 遊ゴロ 五回表 E・ロンゴリア 空振り三振 C・ペーニャ 左飛 B.J.アップトン 三ゴロ 六回表 W・アイバー 空振り三振 D・ナバーロ 三邪飛 G・キャプラー 三邪飛 七回表 J・バートレット 左直 C・クロフォード 二ゴロ B・ゾブリスト 右飛 八回表 E・ロンゴリア 中飛 C・ペーニャ 三邪飛 B.J.アップトン 空振り三振 九回表 W・アイバー 一直 D・ナバーロ 左直 G・キャプラー 遊ゴロ MLB.com Gamedayより動画その後のブレイデンは、同月28日のレイズ戦では4回6失点と打ち込まれ、5月3日のテキサス・レンジャーズ戦では7回3失点のQSながら打線の援護に恵まれず、と2連敗。そして同月9日、本拠地でのレイズ戦を迎える。この日は母の日で、既に母を亡くしているブレイデンは祖母ペギーを球場に招待。またこの日からアスレチックスはブレイデンの登板日に限り、彼の故郷ストックトンの市外局番 "209" にちなんで、209セクションの客席のチケット価格を半額にするキャンペーンを開始した。ブレイデンは試合開始前、この日バッテリーを組むランドン・パウエルとブルペンで投球練習を行う。捕手から見て今日の出来はどうか、と訊ねるブレイデンにパウエルは親指を立てたが、実際のところこのやりとりは毎回のルーテイーンになっており、ブレイデン自身はこの日の出来についていつもと変わらない感覚だったという。 球審のジム・ウルフがプレイボールを告げて試合開始。先頭打者ジェイソン・バートレットに対し、ブレイデンは初球に外角高目へ85mph(約136.8km/h)のシンカーを投じてストライクを奪う。2球目、内角高目の速球をバートレットが捉えるが、三塁手ケビン・クーズマノフへのライナーとなって1アウト。2番カール・クロフォードを真中低目へのスライダーで一ゴロに、3番ベン・ゾブリストを外角低目へのチェンジアップで中飛に、それぞれ打ち取ったブレイデンは三者凡退で初回を終える。2回表は、先頭の4番エバン・ロンゴリアに対し3ボール1ストライクとカウントを不利にするが、6球目の速球で中飛に仕留めると、6番アップトンからはこの日初の三振を奪った。その裏、味方打線が相手先発ジェームズ・シールズを攻め立て、二死一・二塁からパウエルの適時打で1点を先制する。3回と4回も、ブレイデンがレイズ打線を三者凡退に抑え、その裏にアスレチックスが得点するという展開となり、4回終了時点でアスレチックスが4-0のリード。 ここまで1人の走者も出せていないレイズは5回表、先頭のロンゴリアが初球にセーフティーバントを試みる。しかし結果はファウルとなり、ロンゴリアはこの打席は空振り三振に倒れた。6回表、二死から打席に立った9番ゲーブ・キャプラーが、2球で2ストライクに追い込まれながらファウルを打ち続けて粘るが、最後は12球目の内角高目88mph(約141.6km/h)の速球を引っ掛けて三邪飛で3アウトに。ブレイデンはこのときから「周りの反応が妙なことに気が付いて、何が起こっているのかを悟った」と、完全試合を意識し始める。投手本人だけでなく、捕手のパウエルもまた、この回あたりから徐々にナーバスになってきた。7回表は7球で終了。8回表、一死から5番カルロス・ペーニャが初球を打ち上げて三邪飛となり、これでブレイデンは2009年4月19日に記録した自己最長イニングを更新する。6番アップトンは空振り三振に仕留め、メジャー初完投・初完封、そして完全試合まであと1イニングとなった。 9回表、先頭の7番ウィリー・アイバーを2ボール2ストライクからの5球目、内角高目89mph(約143.2km/h)の速球で詰まらせて一直に。8番ディオナー・ナバーロは2球で左直に打ち取る。そして最後の打者キャプラーが3ボール1ストライクからの5球目、真中高目への87mph(約140.0km/h)の速球を弾き返した。この打球を遊撃手クリフ・ペニントンが処理し、一塁手ダリック・バートンへ送球。キャプラーが一塁に到達するより早く送球をバートンがキャッチし3アウトとなった瞬間、ブレイデンはMLB史上19人目の完全試合を達成した。チームメイトからもみくちゃにされて祝福を受けたあと、ブレイデンは客席からフィールドに下りてきた祖母ペギーを抱きしめ、喜びを分かち合った。
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