砂丘と沿岸部
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/08 14:25 UTC 版)
海岸線に近づくにつれて樹木はまばらになり、浜と森の間に植生のグラデーションが見られる。海にもっとも近い場所には白い砂丘が広がり、これらは植生の被覆が少なく流動的である。移動する砂丘はほとんどの植物種にとっては有害であるが、一方で海への近さによって、藻類の分解などを通じて養分ももたらされる。ビーチグラスが特徴的な種であり、この環境に完全に適応している。砂に覆われると生長が促進されるため、常に砂丘よりも高い位置にいることができるのである。ビーチグラスの地表下の部分は、このため、数メートルの長さに達することもある。こうしたビーチグラスの多くは20世紀に海岸の砂丘を安定化させるために入植されたものであるが、元々島には生息していた種であった。白い砂丘におけるビーチグラス以外の特徴的な植物としては、ライムグラス(英語版)、ハマエンドウ、カレックス・アレナリア(スゲの一種)、国内の他地域では20世紀に劇的に減少したエリンギウム・マルティマム(ヒゴタイサイコ属の一種)などがある。海のもっとも近くに生息する種は、ハマハコベやノハラヒジキ、カキレ・マリティマ、ホソバハマアカザなどの塩分に耐性のあるものである。 海から離れるにつれて、砂丘は植物の被覆のために白色から灰色を呈するようになる。こうした砂丘は養分が少ないが、草木に固定されているため比較的安定している。そこかしこにビーチグラスやカレックス・アレナリアが生えており、またコリネフォラス・カネッセンス(イネ科)や苔、地衣類(ハナゴケ)も見ることができる。砂丘の窪地には局地的に湿気が溜まりやすく、比較的豊かな植生を育くんでいる。例えばセイヨウユキワリソウ、Dactylorhiza fuchsii(ハクサンチドリ属)、Epipactis atrorubens(カキラン属)、Epipactis palustris(カキラン属)などである。ブリェドサンドスッデ(Bredsandsudde)の南西部のドゥンシェーレト(Dynkärret)は砂丘の中でも草花に富む湿地の1つである。西部と北東部には、灰色の砂丘と森に挟まれてブルイェンという地域があり、地表が小石に覆われている。植生は極めて貧相でほとんど地衣類しか見られないが、クマコケモモやオウシュウマンネングサ、ヨウシュイブキジャコウソウ、エゾノチチコグサなども見られる。 過去10年間に、沿岸部のほうまで松林が広がり始めたが、これは砂丘の固定化によって、松の生育を妨げる堆砂が減少したためであると考えられる。 ゴツカ・サンド島を代表する動物の1つはハイイロアザラシで、特にセールッデン(Säludden; 文字通り「アザラシの浜」の意)でよく見られる。バルト海のハイイロアザラシは大西洋の生息地からは孤立しており、20世紀初頭には10万頭いたものが、乱獲と汚染のために1975年には3,600頭にまで激減した。こうした理由で島のアザラシは禁猟化されている。スウェーデンの沿岸部では再び生息数が増加しつつあるが、かつての水準には遠く及ばない。島で観察することはできるが、生息数は比較的少なく繁殖数は限られている。 アザラシに加えて沿岸部には海鳥も多くみられ、ニシセグロカモメやカモメ、ミヤコドリ、ハジロコチドリ、タゲリ、そしてやや稀少だがホンケワタガモなどの繁殖地となっている。ブリェドサンドスッデはとりわけ鳥類が多い。 さらに、樹林と同様に沿岸部の昆虫も多様かつ独特である。この区域に特徴的な種には、砂に地下穴を掘って幼虫を育てるサトジガバチや種々の有剣類(ハナバチやミツバチ)、彼らを閉じ込める蟻塚、砂で日中を過ごし夜に獲物をとる甲虫類などがある。
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