石炭化度による分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 16:28 UTC 版)
石炭は炭素の濃集度合(炭素の濃縮の程度) により石炭化度の高い方から、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭に分類される。日本で一般に石炭と呼ばれているものは、このうち無煙炭から褐炭までである。なお、石炭化度は発熱量と燃料比(固定炭素÷揮発分、通常では無煙炭:4以上、瀝青炭:1~4、褐炭:1以下)を用いているが、国際的には一般に揮発分が用いられている。 (石炭化度の高い順に) 無煙炭 (anthracite) 炭素含有量90%以上。最も石炭化度(炭素分)が高く燃やしても煙をほとんど出さない。カーバイドの原料、工業炉の燃料に使われるほか、家庭用の練炭や豆炭の原料となることもある。かつては軍艦用燃料に重んじられた。ただし揮発分が低く、着火性に劣る。焼結に使用可能な低燐のものは原料炭の一種として高価格で取引される。 半無煙炭 (semianthracite) 炭素含有量80%以上。無煙炭に次いで石炭化度が高いが、粉鉄鉱焼結にも適さない一方、電力等微粉炭ボイラー用としては揮発分が少なすぎて適さず、比較的安値で取引される一般炭。セメント産業の燃料や流動床ボイラに使われる。着火性に劣るが比較的発熱量が高く、内陸工場への輸送コストが安く済む。 瀝青炭 (bituminous coal) 炭素含有量70~75%。石炭として最も一般的なもの。加熱により溶けて固まる粘結性が高く、コークス原料に使われたり、製鉄用燃料となる。 亜瀝青炭 (subbituminous coal) 瀝青炭に似た性質を持つが、水分を15~45%含むため比較すると扱いにくい。粘結性がほとんどないものが多い。コークス原料には使えないが、揮発分が多くて火付きが良く、熱量も無煙炭・半無煙炭・瀝青炭に次いで高い。特にボイラー用の燃料として需要がある。豊富な埋蔵量が広く分布しており、日本で生産されていた石炭の多くも亜瀝青炭であった。 褐炭 (brown coal) 炭素含有量60%以上。石炭化度は低く植物の形を残すものも含まれ、水分・酸素の多い低品位な石炭である。練炭・豆炭などの一般用の燃料として使用される。色はその名の示す通りの褐色。水分が高すぎて微粉炭ボイラの燃料としては粉砕/乾燥機の能力を超えてしまう場合が多く、重量当たり発熱量が低いので輸送コストがかさみ、脱水すれば自然発火しやすくなるという扱いにくい石炭なので価格は最安価で、輸送コストの関係で鉱山周辺で発電などに使われる場合が多い。褐炭を脱水する様々な技術の開発が行われている。また、水素原料として有望視されている。 亜炭 (lignite) 褐炭の質の悪いものに付けられた俗名。炭素含有量60%未満。ただし、亜炭と呼ぶ基準は極めて曖昧である。学名は褐色褐炭。埋れ木も亜炭の一種である。日本では太平洋戦争中に燃料不足のため多く利用された。現在では亜炭は肥料の原料としてごく少量利用されているにすぎない。 泥炭 (peat) 泥状の炭。石炭の成長過程にあるもので、品質が悪いため工業用燃料としての需要は少ない。ウイスキーに使用するピートは、大麦麦芽を乾燥させる燃料として香り付けを兼ねる。このほか、繊維質を保ち、保水性や通気性に富むことから、園芸用土として使用される。 日本産業規格による分類 (JIS M 1002)分類発熱量補正無水無灰基kJ/kg (kcal/kg)燃料比粘結性主な用途備考炭質区分無煙炭 (A)Anthracite A1 --- 4.0 以上 非粘結 一般炭原料炭 A2 火山岩の作用で生じたせん石 瀝青炭 (B, C)Bituminous B1 35,160 以上(8,400 以上) 1.5 以上 強粘結 一般炭原料炭 B2 1.5 未満 C 33,910 以上 35,160 未満(8,100 以上 8,400 未満) - 粘結 一般炭原料炭 亜瀝青炭 (D, E)Sub-Bituminous D 32,650 以上 33,910 未満(7,800 以上 8,100 未満) - 弱粘結 一般炭 E 30,560 以上 32,650 未満(7,300 以上 7,800 未満) --- 非粘結 一般炭 褐炭 (F)Lignite F1 29,470 以上 30,560 未満(6,800 以上 7,300 未満) --- 非粘結 (一般炭) F2 24,280 以上 29,470 未満(5,800 以上 6,800 未満) ---
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