着色版
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「月世界旅行 (映画)」の記事における「着色版」の解説
本作の着色版のプリントは、1993年に匿名の寄贈者がカタルーニャ映画祭(英語版)に200本のサイレント映画コレクションを寄贈した際にその中から再発見されるまで、もはや現存しない(失われた映画)と長らく見なされていた。この複写ネガから発見された手彩色プリントが、エリザベス・テュイリエの現像所で着色されたものかどうかは不明だが、使用されているパーフォレーションから1906年以前に製作されたものと考えられている。また、宇宙船の発射シーンで使用されている国旗がスペイン国旗を模したものになっていることから、おそらくこの着色版はスペインでの公開用に作られたものと推測されている。 1999年、カタルーニャ映画祭のアントン・ヒメネスは、フランスの映画会社ロブスター・フィルムズ(フランス語版)のセルジュ・ブロンベルグ(フランス語版)とエリック・ランジュに本作の着色版プリントが現存することを伝えた。しかし、それは損傷が激しく、フィルムが完全に溶解してしまっていると想定された。それでもブロンベルグとランジュは再発見されたばかりのセグンド・デ・チョーモン(英語版)のフィルムと交換することを申し出て、ヒメネスは提案を受け入れた。ブロンベルグとランジュは、修復のために様々な専門機関に相談をしたが、フィルムのリール部分が溶解して硬い塊になっていたために、どの機関も修復は不可能と返答した。しかし、2人がフィルムのフレームを分離する作業を行ったところ、溶解して固まっているのはフィルムの端部分だけであり、多くの部分がまだ損傷していない状態であることを発見した。2002年から2005年にかけて様々なデジタル化作業が行われ、1万3375枚のプリントの断片を保存することができた。2010年にはロブスター・フィルムズ、Groupama Gan Foundation for Cinema、およびTechnicolor Foundation for Cinema Heritageにより、着色版プリントの完全修復作業が開始された。デジタル化された着色版プリントの断片を用いたフィルムの再現には、メリエス家が所有するモノクロ版プリントを利用して欠落したフレームの再作成及び復元が試みられ、映写速度もサイレント映画本来の速度である毎秒14フレームで行われた。復元作業はロサンゼルスのテクニカラーの研究所で行われ、2011年に完了した。修復費用は100万ドルだった。 この修復版は、再発見から18年後、初公開から109年後の2011年5月11日に、第64回カンヌ国際映画祭でフランスのバンド・エールによる新しいサウンドトラック付きでプレミア上映された。翌2012年にはアメリカのFlicker Alley社から、Blu-rayとDVDの2枚組で発売され、特典としてブロンベルグとランジュによる長編ドキュメンタリー『メリエスの素晴らしき映画魔術』が収録された。ニューヨーク・タイムズ紙の映画批評家のA・O・スコットは、「今年、いや、今世紀の映画界のハイライトであることは間違いない」と評した。修復版は日本でも、2012年8月に『メリエスの素晴らしき映画魔術』と同時に公開され、同年11月に紀伊國屋書店からBlu-rayが発売された。
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