目的をめぐる議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 22:08 UTC 版)
UVB-76の放送の目的については諸説ある。 乱数放送説 送信所の位置がロシア連邦軍参謀本部の通信拠点であると噂されていることと、多くの音声メッセージにフォネティックコードと数字の組み合わせが聴き取れることから、UVB-76は短波に存在する多くの乱数放送と同様に、世界各国のスパイに対して、暗号化されたメッセージを送信する役割を担っていると広く信じられている。こうした乱数放送のための通信設備は、軍や諜報機関によって利用されていると考えられているが、その性質上目的や存在について公表は出来ないため、ロシア政府(もしくはロシア連邦軍)もUVB-76について一切言及していないというもの。乱数放送の分析を行う団体「エニグマ2000」のドイツ支部長は「内容はイレギュラーではあるが、UVB-76も乱数放送の一種である」と推測している 国内の軍隊への通信説 UVB-76の(ナロ=フォミンスクへの送信局移転前の)送信用設備スペックが簡易軍事用のものであるとみられることなどを理由として、放送は国外のスパイ等に対するものではなく、モスクワ軍管区の部隊と新兵募集センターに命令を送信するためのものだとする説がある。特に、2014年3月18日の音声メッセージは、クリミア併合の直後に発せられたことから、この説との関連が推測されている。 また、音声メッセージは各地の受信局のオペレーターが正しく警戒任務にあたっているかどうかを確認するために発しているという推測がある。 機器の保守点検説 機器が正常に稼働し続けている証明としてブザー音を発している、一種のデッドマン装置という説。 核戦略の一部説 上記の説の拡張として、ブザー音が途切れて一定時間経過した場合、他国からの核攻撃がなされ、放送が不可能になるほどのダメージがモスクワにまで及んだと見なし、軍の判断で核による報復攻撃を行える、という冷戦時に用いられた核戦略(通称「デッド・ハンド(英語版)」)の一部であるという説。 非常時用の周波数説 上記と近似する理由として、戦争状態を含めた非常時の臨時放送に使用するための周波数であり、平時は他の目的に使われないようブザー音を流し続けて保持されているという説。 データ送信用説 アナログモデムとしてデータ送信のために使用されており、元から聴取を目的とした放送ではないという説。 電離層の観測説 電離層の観測に関して報告している文献中で、この電波を指している記述が発見されている。「Borok Geophysical Observatory」において行われている観測に用いられている電波として、搬送波の周波数として4.625MHz(4625kHz)という、UVB-76のそれに一致する値が示されている。この電波を、太陽活動の変化などが電離層に反映することを観測するため、電波が電離層に反射される様子の変化を比較するために用いたものである。 チャンネルマーカー説 ブザー音を継続的に送信することで、人々がその周波数を別の用途に利用することを防ぎ、無線局のオペレーターが周波数を合わせやすくするという説。
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