目的や用途による分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 14:37 UTC 版)
タータンはその目的や用途などによって大まかに分類される。 クラン・タータン クランを構成する者が着用するタータン。クランごとに異なるパターンを持つ。日本ではタータンが「家紋のようなもの」と紹介されることもあるが、これはクラン・タータンのことである。クランとクラン・タータンは必ずしも1対1で対応しているわけではない。一つのクランが複数のクラン・タータンを持つこともある。1900年代初期には好き勝手にクラン・タータンが作られないよう、スコットランド紋章院の長官が厳しく審査を行っていた。現在ではクラン・チーフがパターンについての決定権を持ち、キャンベル・クランのようにチーフの意思によって変更になることもある。クラン・チーフおよびその直系家族はクラン・タータンを着用せずに「チーフ・タータン」を着用する。また直系以外の家族は「ファミリー・タータン」を着用する。かつてのチーフを中心としたミニ国家然としたクランは消滅したが、今日でも同じ姓を持つ人々がチーフの元、クラン協会を設立しクラン・タータンの保存に努めている。 ディストリクト・タータン 地域に関係したタータンで、もともとは採れる染料の違いなどから地域ごとにパターンが違ったものが、ディストリクト・タータンとして認識されるようになったものと思われる。また特に地域に由来を持たなくとも地名を冠してさえいればディストリクト・タータンに分類される。伝統的な着用マナーでは、クラン・タータンを持たない者が着用するものとされる。地域はスコットランドや英国領に限定されるわけではなく、カナダの各州やアメリカ合衆国の多くの州は公式または非公式のディストリクト・タータンを持っている。また、カナダはメイプル・リーフ・タータンを国の公式なエンブレムに採用している。 ミリタリー・タータン アーミー・タータン、ガヴァメント・タータンとも呼称される。軍隊で使用されるタータンで最も有名かつ起源とされるのがブラックウォッチ・タータンである。 ロイヤル・タータン 王室が用いてきたタータンである。ロイヤル・スチュアートなど古くは君主の許可を必要とするものもあったが、現在ではヴィクトリア女王の夫アルバート公によってデザインされたバルモラルのみ王室専用のタータンとされている。ロイヤル・スチュアートはタータン登記所のカテゴリでは clan/family に分類されている。バルモラル以外のロイヤル・タータンでは、ヴィクトリア女王が愛用しバルモラル城のインテリアにも使用されたというヴィクトリアなどがロイヤル・タータンとされている。 コーポレート・タータン 企業が制服や販売促進、コーポレート・アイデンティティに利用するタータンである。著名なものとしてバーバリーのタータンが挙げられる。日本でも伊勢丹は1960年ごろからマクミラン・アンシェントをショッピングバッグに採用し、伊勢丹の象徴とも言える存在となっていた。2013年にはオリジナル・タータンであるマクミラン・イセタンを制作している。他にもサンリオは2009年にハローキティの生誕35周年を記念してオリジナル・タータンを登録している。 ファッション・タータン ファッションで使われるタータン。誰が着てもよいとされるユニバーサル・タータンである。伝統性などとは無関係であるため好ましく思わない人間も存在する。 メモリアル・タータン 何かの記念または追悼などでデザインされるタータン。ダイアナ妃を追悼・顕彰するダイアナ・プリンス・オブ・ウェールズ・メモリアルなどがある。 ハンティング・タータン ヴィクトリア時代に生まれたタータンで、元々存在するタータンの色合いが狩猟に適したものになっているもの。黒や茶、暗緑色などを基調とし暗い色調となっている。ハンティングと名前がついているが実際に狩猟に使われることは稀であったという。 ドレス・タータン ハンティング同様、ヴィクトリア時代に生まれたタータンで、元々存在するタータンの基調を白としたもの。ディナーに正装をする習慣が広まったことにより生まれた。ハイランドの女性たちが着ていたアリセドという白やクリーム色を基調としたタータンを元にして生まれた。マクラウド・ドレスのように基調が白ではないもの(黄色)も存在する。今日ではハイランド・ダンス(英語版)の衣装として好まれる。
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