登頂の可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 02:35 UTC 版)
「アンドリュー・アーヴィン」の記事における「登頂の可能性」の解説
1999年、イギリスのBBCとアメリカのテレビ局WGBH製作のドキュメンタリーシリーズ「NOVA」が共同で企画したマロリー、アーヴィン捜索隊が、8、155m付近でマロリーの遺体を発見した。この発見により、二つのことが明らかになった。 マロリーの腰にはロープで強く引っ張られたために生じたひどい出血が見られたこと。これは何れかのポイントで2人がロープで結ばれたまま、滑落したことを意味しており、さらにその後、ロープが露出した岩に引っかかることにより、マロリーがその場所に横たわったことを意味している。 マロリーの遺体には北東稜から滑落した最近の例に見られるような激しい損傷が見られず、比較的損傷の少ない状態で「8200mスノーテラス」のすり鉢状の地形で発見された。さらに、捜索隊が発見するより前にマロリーの遺体を発見したとされる中国の登山家王洪宝は、彼のピッケルが、滑落最終地点である遺体発見現場の近くに落ちているのを発見していた。これにより、以前に発見されたピッケルがアーヴィンのものであることが判明した。 これらの調査結果から、いくらかの推測ではあるが、マロリー、アーヴィンがエベレスト登頂に成功した可能性を見出している。 第1に、マロリーは登頂成功の暁に山頂に置くため妻の写真を所持していたとマロリーの娘が常に言っていたこと。この写真はマロリーの遺体・遺品から発見されなかった。遺体と衣服の保存状態が極めて良好であった事からも、死後の写真喪失ではなく山頂に置いた可能性が存在する。ただし現在のところ、山頂で写真は発見されていない。 第2に、マロリーの遺体発見時に彼のスノーゴーグルがポケット内に入れられていた点であるが、それは彼が夜間に死亡した可能性を意味している。さらにこれは、マロリーとアーヴィンが登頂未達成のまま日没後に下山した可能性も含んでいる。彼らの出発時間と行動能力から判断すれば、彼らが登頂成功後の下山中に滑落したということも考えられる。 どちらも推測の域を出ていないが、決定的な具体的証拠を与えそうなものが1つだけ存在する。それはアーヴィンが所持していたと思われるカメラである。アーヴィンの日記に記されていた2台のカメラは未だ発見されていないが、登山の際にこのどちらか1台は所持していたと多くの人が推測している。コダックの専門家は、カメラがフィルム入りで発見されればそのフィルムが白黒であり急速冷凍されたであろう事から、修復して現像できる可能性があると述べた。 1965年に1960年中国エベレスト遠征隊の Wang Fu-chou がレニングラードで行った講演で「高度8600メートルあたりでヨーロッパ人の遺体を発見した」と発言した。ヨーロッパ人である根拠として「サスペンダーを着用していた」と答えている。 1975年、王洪宝が、8,100m付近でイギリス登山者の遺体を見たと報告した。1979年にも日本登山隊隊長長谷川良典との短い会話で報告したが、その仔細を語る前に王は雪崩に巻き込まれ死亡した。後に王の報告とほぼ同じ高度でマロリーの遺体が発見されたことから、王が発見したのはマロリーの遺体であるとする見解が根強い。しかし、「頬にゴルフボール程度の穴」という王の報告は、捜索隊発見時の「顔を下に向けて頭が瓦礫に埋没していた」という状態と一致しない為、王の発見した遺体がマロリーではなくアーヴィンのものである可能性もある。報告との不一致は王が簡易的埋葬をしたという可能性もある。2001年の捜索では王のキャンプ周辺が広範囲に調査されたが、発見された遺体はマロリーのもののみであった。 2001年に行われたインタビューで1960年中国エベレスト遠征隊副隊長の Xu Jing は「ファーストステップからの下山中に遺体を見た」と語ったが、過酷な状況であったため正確な場所を記憶していなかった。この中国遠征隊以前に北東稜でマロリーとアーヴィン以外に遭難記録がない事と、マロリーの遺体が発見された場所と明らかに高度が違う為、報告された遺体はアーヴィンのものであると目されている。 マロリーかアーヴィンが所持していたと思われるヴェスト・ポケット・コダックモデルBを見つけ出すために、1986年、1999年、2001年、2004年、2005年と捜索が行われたが、発見されることはなかった。その推測と議論は「The Mystery of Mallory and Irvine(マロリーとアーヴィンの謎)」として、いまだに続いている。
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