病態生理と病因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/07 16:47 UTC 版)
はっきりと分かっていることは、この病気は生まれつきである。この病気になるのか、ならないのか、軽い状態でとどまっているのか、どんどん進むのか、生まれた段階である程度決まっている。80%は軽度、重度は5%である。研究が行われたにもかかわらず、円錐角膜の病因については謎が残されている。アメリカ合衆国の United States National Keratoconus Foundation によると、円錐角膜を引き起こす要因はいくつもある: 遺伝、環境、細胞レベルでの要因のいずれもが発病のきっかけになりうる。一旦発病すると、ボウマン層(角膜上皮と実質との間の膜)が進行性に融解する。角膜上皮と実質とが接触すると、細胞及び組織レベルの変化が起り角膜の構造が一体性を失っていく。そのため、特徴的な膨隆と傷害が発生する。一つの角膜の中に、変性を伴う菲薄化部位と組織修復部位とが同居するのが認められるだろう。 自覚的な視覚像の歪みは二つの理由によって起る。一つは角膜の不正な変形であり、もう一つは露出した頂上部の損傷である。これらのために入射光が複数の網膜部位に投射され、特徴的な片眼複視をもたらす。暗環境に順応して瞳孔が散大すると変形した角膜表面を広く利用することになるため、症状は悪化する。角膜表面の損傷は角膜崩壊の一面であるかに思われるが、最近の複数機関を跨いだ大規模な研究では、コンタクトレンズによる摩耗が損傷を起りやすくしており、有所見率が2倍以上にもなることが示唆されている。 多くの研究が、円錐角膜では蛋白分解酵素の活性が高いことを示している。角膜実質にあるコラーゲンの架橋を破壊する酵素である。同時に、蛋白分解酵素抑制物質の遺伝子発現が低い。また別の研究ではアルデヒド脱水素酵素の活性が低下していることがフリーラジカルを増やすことに繋がり、角膜を構成する物質の酸化を引き起こすと示唆している。いずれにせよ、角膜菲薄化と生物工学的な脆弱化は角膜内部の要因による角膜の傷害が原因であるようだ。 円錐角膜になりやすい遺伝的体質が調べられた。代々円錐角膜をもつ家系の追跡及び一卵性双生児における罹患の一致性が用いられた。ある家系内での発病率を明確に決めることができないが、一般よりかなり発病率が高い家系があることは知られており、その程度を研究者は6-19%と推測している。責任遺伝子はまだ明らかになっていない: 孤立した、おおまかにみて均一な共同体を対象とした研究が二つあり、それぞれ染色体上の 16q と 20q を責任箇所と推定する異なった結果を出している。しかしながらほとんどの遺伝的研究は常染色体優性遺伝であろうということで一致している。ダウン症候群での有病率が高いが、その原因は今なお不明である。円錐角膜は気管支喘息、アレルギー、湿疹と同様、アトピー症候群と関連づけられており、ある個人がこれらの疾患のいくつか、あるいは全てを持つことも稀ではない。一連の研究によると、目をしきりに擦ることが円錐角膜の進行を促進するらしく、患者にこのような動作を避けるよう指導しなければならない。
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