生物における浸透圧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/15 23:59 UTC 版)
生物においては、細胞膜は半透膜である。 細胞内の溶液と比較して、浸透圧が高い溶液を高張液(英: hypertonic)、低い溶液を低張液(英: hypotonic)、等しい溶液を等張液(英: isotonic)という。 細胞内の溶液と浸透圧が等しい食塩水を生理食塩水と呼び、ヒトの場合は約 0.9w/v% である。また生理食塩水にカリウムなどを入れ人間の体液に近付けた液をリンゲル液と呼ぶ。 水道水などで目を洗う際にしみて痛くなるのは、この浸透圧の作用による。濃度が0の真水や水道水に比べて眼球の細胞内の溶液の浸透圧が高いため、外側の水分子が細胞内へ移動して細胞が膨張し、その時に痛みを伴う。そのため目薬などの点眼薬は、浸透圧を生理食塩水に合わせ、目にしみないように作られている。 赤血球を真水に入れると、内部へ浸透した水の圧力により赤血球が破壊される溶血が起こる。 自然界の生物においては、淡水は細胞内より浸透圧が低く、海水は浸透圧が高いので、それぞれに浸透圧調節が必要となる。シロザケのように海と河川を往復する水生物にはエラの付け根にある塩類細胞の増減で行い、河口付近で半月~1か月待機して適応する* 海と河川湖沼の行き来に必須の塩類細胞の働き。動物においては排出器の役割の一つである。 植物細胞には細胞壁があるため、陸上植物の細胞を高張液に入れた場合には原形質分離が起こり、真水に入れた場合には一部の細胞を除き膨らむだけで破裂することはない。細胞膜が細胞壁を内部から圧する力を膨圧と言い、細胞壁の薄い植物体を支えたり、気孔の開閉、オジギソウ・食虫植物の運動の原動力となっている。 極端に糖分や塩分が高い食品が腐敗しにくいのも浸透圧によるものである。細菌が取り付いて繁殖しようとしても、自身の細胞から水分が吸い出され、死滅してしまったり非常に遅い速度でしか繁殖できないためである。
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