生物における硫黄化合物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 17:53 UTC 版)
硫黄化合物は生物でも不可欠な役割を果たしている。ビタミンB1とB7(ビオチン、ビタミンHとも)に含まれる。 植物の根では、硫黄は硫酸イオンの形で吸収され、還元されて最終的に硫化水素となってから、システインやそのほかの有機化合物に取り込まれる。 アミノ酸ではシステインとメチオニンが硫黄を含み、それらがさらにペプチド・蛋白質に取り込まれる。そのほか含硫アミノ酸としてはホモシステインとタウリンがあり、これらはペプチド・蛋白質には取り込まれないが代謝上は重要である。 蛋白質のシステイン残基にあるチオール基は、システインプロテアーゼなどの活性中心として機能する。また1対のシステイン残基の間にジスルフィド結合(S-S結合)が形成され、蛋白質の高次構造(三次構造・四次構造)を形成・維持するうえで重要である。顕著な例として、羽毛や毛髪が力学的・化学的に頑丈なのは、主要蛋白質ケラチンに多数のS-S結合が含まれていることが大きな要因である。これらを燃やしたときの特異なにおい、またゆで卵のにおいも、おもに硫黄化合物による。 硫黄を含む低分子ペプチドとして特に重要なのはグルタチオンで、細胞内でそのチオール基により還元剤として、あるいは解毒代謝に働いている。またアシル基に関係した多くの反応は、たとえば補酵素A、α-リポ酸などの、チオール基を含む補欠分子を必要とする。 一部の光合成・化学合成細菌では、硫化水素が水の代わりに電子供与体として使われる。多くの生物の電子伝達系で、硫黄と鉄からなる鉄-硫黄クラスターが働いている(フェレドキシンなど)。また呼吸鎖のシトクロムc酸化酵素の銅中心CuAにも含まれる。
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