環境対策・都市景観への配慮
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 03:57 UTC 版)
「名古屋高速1号楠線」の記事における「環境対策・都市景観への配慮」の解説
国道41号の片側3車線箇所(画像左)と片側2車線箇所(画像右)。片側2車線区間では民地との離隔を取るために橋桁を上下方向に振り分けることで圧迫感軽減に努めた。 1号楠線は当初全線高架式で計画されたものが、その後日照阻害等の環境問題の観点から一部半地下式に変更されたものを高架式に再変更した経緯を持つ。特に半地下式から高架式に戻す過程では沿線住民の反対が激しく、公社としても理解と納得を得るために環境対策として万全を期す構えで策定したのがY型ダブルデッキ(段違い式二層高架構造)と称する道路構造の採用であった。これは1号楠線の直下を並行する国道41号の清水口 - 黒川間が、それ以外の区間と比べて片側2車線と幅員が狭く、そこに従来式のT型都市高速を建設した場合、民有地と都市高速の間隔が接近しすぎることで住民の受ける圧迫感が大きいことから、それを払拭する意図で考案されたものである。 段違い式とすることで高速道路の幅員を通常は19 m必要なところを14 mまで縮小することで民有地と都市高速のクリアランスが保たれ、しかも低層部分を14 - 17 m、高層部分を23 - 26 mと高くすることで住民の受ける圧迫感はかなり軽減された。さらにY型とすることで都市景観にも配慮している。また、段違い式とすることで下層の走行音が上層高架裏面で反響して交通騒音が増大する懸念が生じたことから、上層高架裏面に吸音板を設置している。なお、高架式再変更を検討中の1985年(昭和60年)当時、Y型高架式を採用するのは首都高速9号深川線の辰巳JCT付近で、当時全国唯一の例であった。ただし、辰巳の場合は騒音、排気ガス対策、および辰巳JCTの構造上、接続する9号深川線も一部で路面を高くする必要があったことで段違い式を採用しているため、圧迫感軽減や都市景観の配慮を目的とした段違い式二層構造の採用は名古屋高速が最初の事例となった。 当該区間の橋桁の架設に当たっては、新工法を開発のうえ取り付けることになった。この区間は道路幅が狭く、坂道であることに加えて、Y型ダブルデッキの上段部の高さが28 mと非常に高いことから、クレーンで1ブロック毎に橋桁を吊り上げる従来の工法では大きな困難が予想されたためである。新工法とは、地上であらかじめブロックをつなげておき、油圧式ジャッキを用いてワイヤで吊り上げて架設するもので、安全性に富み、ベントを設置する必要がないことから工事占用帯における交通規制を不要とした。 当初計画では段違い式二層構造は黒川から清水口までの1.3 km区間のみに適用し、清水口以南の広幅員街路区間は一層構造が検討されていた。しかし、清水口から東片端間には武家屋敷や明治時代と大正時代の面影を今に残す撞木町(しゅもくちょう)、白壁、主税町(ちからまち)の町並み保存地区があることから、景観を壊さないための配慮として二層構造を東片端まで延長することになった。高架式への再変更が公表されて以来、地域住民からは町並み保存地区の景観が高架によって損なわれるとの声が上がっていたが、名古屋市としても景観面の配慮から対策を打つことになったものである。 Y型ダブルデッキ 上層部高架裏面の吸音版 主税町の町並み保存地区から望むダブルデッキ型高速道路 当初清水口までの計画とされた二層構造は景観面の配慮から東片端JCT付近まで延長された 段違い式二層と一層の移行区間
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