温度と圧力に関する誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 01:24 UTC 版)
「成形炸薬弾」の記事における「温度と圧力に関する誤解」の解説
成形炸薬の装甲侵徹原理とこれによる装甲車両への破壊効果について、「高温のガス・メタルジェットによって装甲を融かして穴を開ける」「高温のガス・メタルジェットが車内に吹き込むため、これにより車内が焼き尽くされる」というような誤解がなされていることがあるが、前述した通り、装甲が液体として振舞うのは主として温度ではなく圧力による。たしかにメタルジェットは高温であり液体として挙動するが、固相の金属その物であり断熱系のため、ジェットの発生しているような短時間に爆発の熱が装甲に伝導し溶融するほどの高温にはならない。 確かに、衝撃インピーダンスが低い物質(気体など)は動的なエネルギーなどで圧縮を受けると熱に変換されやすい。この現象は宇宙船の大気圏再突入時にも起こる。大気圏突入時に宇宙船は高温に曝されるが、この時の熱は、ここで挙げたような、大気が進行方向への圧縮によって高温のホットスポットを生みそれが機体に輻射されることによるものである。また、超高速の領域では衝突時の作用面の温度上昇は無視できないパラメータとなり、例えば固体でも相対速度10km/s以上の衝突を再現する軌道プラットホームのホイップルバンパーへの耐デブリ実験では、投射体とバンパーの命中箇所が高圧と高温により蒸発してしまうレベルになりうる。 しかし、金属をはじめとした固体全般のような衝撃インピーダンスが高い物質と、通常の成形炸薬のメタルジェットの速度領域という条件下では、受けた動的エネルギーは熱より圧力に変換され易くなる。その結果として動的超高圧が主な要因となって、装甲に塑性流動を引き起こす。 HEATラウンドは3つの主要なメカニズムを通じてその有効性を達成する。最も明らかなことは、それが装甲に穴を開けるとき、ジェットの残留物は、それが衝突するすべての内部コンポーネントに損傷を引き起こす可能性がある。また、ジェットが装甲と相互作用するため、内部に穴が開いていなくても、通常、装甲材料の不規則な破片の雲が内面から剥がれ落ちる。この背後の鎧の破片の雲も、通常、破片が当たったものにダメージを与える。
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