民事法及び手続法における慣習法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 02:16 UTC 版)
「法解釈」の記事における「民事法及び手続法における慣習法」の解説
罪刑法定主義や行政による法律の原理のような厳格な要請がない民事法(私法)分野においても、国民の権利・利益に関するものである以上、裁判はなるべく立法府の適法な手続によって制定された成文法によるべきではないのか、そもそも法とは何であるかの問題と深く関わっている。 特に、成文法を中心とする大陸法においては、成文法を正面から否定する解釈態度は避けなければならない。そこで、刑法と同様、成文法の解釈上慣習法を取り込むことによって、両者を調和させる努力をすべきことになる(#論理解釈)。注意すべきは、たとえ同じ民法の解釈であっても、債権のように当事者の個別的関係を取り扱うものについては、具体的妥当性により重きを置くべきものが多くなると考えられているのに対して、物権・相続・法人のようなものは、統一的取り扱いの必要から、少なくとも一般論としては法的安定性の要請が比較的強くなると考えられていることである。 例えば、現代の複雑な法律関係を簡明に処理するためには、当事者にとっても第三者にとっても、婚姻成立を客観的に明確にしておくことが望ましいとの立法趣旨から、日本民法第739条(旧775条)は戸籍法上の「届出」という適法な手続を経ることを「婚姻」の成立要件として要求しており、慣習に則って結婚式をし、夫婦の実質を伴った共同生活をしていようとも、それだけでは法律上の「婚姻」と認めることはできない。だとすれば、「届出」を経ない内縁については、本来一切の法律的効果は認められないはずである(反対解釈)。これに対し、世間一般では夫婦と認められるにもかかわらず、法律が夫婦と認めないという関係は民法の予定しないものであると解釈すると、内縁関係に適用される法律の規定が無いことになり、慣習法による補充は法の許容するものだという結論を導くことができる。現在の判例・学説は、内縁を社会の習俗・道徳と法律の食い違いから生じた一種の準婚関係とみて、一定の範囲で婚姻に準じた取扱いをしようとして、本来の立法趣旨である法的安定性を尊重しつつ、具体的妥当性を発揮させようと努力している。 このほか、訴訟法などの手続法の分野においても、裁判所書記官などによる事務の慣習が実務上一定の役割を果たし、立法化されることもある。
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