架空戦記ブーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 10:12 UTC 版)
いわゆる架空戦記の嚆矢とされるのは檜山良昭の『日本本土決戦』(1981年)に始まる本土決戦三部作であろう。そして、ブームに直接火をつけたのが1988年に出版されたタイムスリップものの『大逆転! ミッドウェー海戦』(リムパックへ向かう途上の海上自衛隊の護衛艦が1942年のミッドウェー海戦直前にタイムスリップして介入)、『大逆転! レイテ海戦』(現代の日ソの潜水艦がレイテ沖海戦に介入)、『大逆転! 戦艦「大和」激闘す』(現代の沖縄県が米軍上陸直前にタイムスリップ)の大逆転シリーズである。従来の作品がタイムトラベルというSF的ギミックをテーマにしていたのに対して、檜山の作品ではタイムトラベルは歴史改変の単なる小説的手段であり、なぜタイムトラベルが起きたかという説明はほとんど(時には全く)なく、作品は檜山の豊富な軍事知識による戦闘描写が主であった。SFが低迷し始めていた時期であり、新しいジャンルの可能性を見い出した出版各社は続々と同様の歴史改変モノを出版し始めた。また、ブームの原動力とも言うべき荒巻義雄の『艦隊シリーズ』(1990年~2000年)が爆発的ヒットを遂げた。やがて、歴史改変にタイムトラベルを介さない(もしくは何らかの外部からの介入をにおわせるが本筋とはほとんど関係ない)軍事シミュレーションが主流となり、従来のSFとは一線を画した「架空戦記」というジャンルが成立し、「架空戦記ブーム」が訪れる。 1990年代には大量の架空戦記が出版された。SFとの境界ジャンルであり、これを手がけるSF作家もいたが、一般にはSFとは区別され、担い手の多くは架空戦記を専門とする作家に書かれた。彼らのほとんどは元々架空戦記を含むSFのマニアで、パソコン通信の関連フォーラムで熱心に発言していた者(アクティブメンバー)も少なくない(作品中に他のアクティブメンバーたちを実名で出演させた者も数人いる)。ハードカバーで刊行されることは少なく、主にノベルズと呼ばれる新書判サイズでシリーズで発行されることが通例である。
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