書譜
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『書譜』(しょふ)は垂拱3年(687年)、孫過庭自ら著した書論(運筆論)で、著者自身が書いた真跡が台北国立故宮博物院に所蔵されている。最初の行に「書譜巻上 呉郡孫過庭撰」、最後の行に「垂拱三年写記」とあり、全文369行で3727字ある。巻の前後には「政和」・「宣和」・「双龍」の印があるが、これは徽宗の鑑蔵印である。 『書譜』は王羲之の『十七帖』とともに草書の代表的な古典である。孫過庭は王羲之の書法を継承し、さらにその書法を発展させた。いまもなお『書譜』が重要とされるのは、王法の忠実な継承作であるとともに、書論としての内容の見識の高さにある。その内容は、王羲之をはじめとする書人の比較、過去の書論の批判、書の本質、書の表現方法など多岐にわたるが、すべて書家としての経験からの論である。最後に「体得したことを秘することはしない。」と記し論を終えている。 巻尾に、「今、撰して六篇とし、分かちて両巻となす。」とあるが、巻頭に「書譜巻上」とあって「巻下」という標題がないため、この他に巻下があったのかどうか学者の間に論議をよんだ。最近の学説では、「今は1巻につなげられているが、もとは2巻に分装されていた。」と見られている。これについて西林昭一は以下のように述べている。 現行書譜全篇で完全に6章より構成されている。その分段と各篇の主意は私見によれば次のとおりである。 巻上第1篇 … 王羲之を典型とする四賢の優劣論 第2篇 … 書の本質と価値 第3篇 … 六朝以来の書論 巻下第4篇 … 執使用転の説および王書の価値 第5篇 … 書表現の基盤と段階 第6篇 … 書の妙境と俗眼への批判 跋語 … 書譜述作の趣意 刻本 『書譜』の刻本としては、宋刻の薛氏本(せつしぼん)・太清楼帖本(たいせいろうじょうぼん)、明刻の停雲館帖本(ていうんかんじょうぼん)・玉煙堂帖本(ぎょくえんどうじょうぼん)、清刻の安麓村本(あんろくそんぼん)・三希堂法帖本(さんきどうほうじょうぼん)などがある。 薛氏本は、元祐2年(1087年)、河東の薛紹彭が刻したので元祐本(げんゆうぼん)の異称がある。徽宗の大観3年(1109年)に『大観帖』が完成したころに、書譜と十七帖も刻して『秘閣続帖』全10巻とともに『太清楼帖』22巻とした。明に入って『停雲館帖』・『玉煙堂帖』に刻入されたが、『停雲館帖』では前半を太清楼帖本から取り、後半を真跡本から取っている。清朝になって安岐が真跡本全巻を得て、天津で刻したのが安麓村本(天津本とも)である。真跡はその後、乾隆帝の内府に蔵され、更に『三希堂法帖』に刻入された。
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