更に続く暗闘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 14:48 UTC 版)
党役員人事と内閣改造後も三木と挙党協側との暗闘は続いた。三木はロッキード社から現金を受け取りながら、刑事訴追を免れた政治家たち、いわゆる灰色高官の氏名公表問題に頭を悩まされることになる。先述のように三木は4月3日の記者会見で明らかにしたように、刑事訴訟法47条の但し書きを援用して灰色高官の氏名公表を行うことを考えていた。しかし「公益上の必要その他の事由があって相当と認められる場合は、この限りではない」との例外規定の適用を判断するのは基本的に司法の領分であり、政府がこの但し書きに基づいて灰色高官の氏名公表に踏み切るのは法に対する政治の介入であるとして、三木の灰色高官名公表の方針には法務、検察当局からの強い反対もあった。 10月15日、稲葉法相は衆議院ロッキード問題特別委員会の席で、ロッキード事件で逮捕された田中角栄、橋本登美三郎、佐藤孝行以外に灰色高官は14名いると報告した。しかし野党側は稲葉の報告に納得せず、あくまで氏名を公表するよう迫った。結局三木は収賄の容疑が濃厚であるものの、時効ないし職務権限の関連で起訴が見送られた政治家の氏名公表に踏み切る決断をした。11月2日にはロッキード問題特別委員会の田中伊三次委員長から委員長提案として、時効で不起訴になった政治家、職務権限はないもののトライスター売り込みに関して金銭を授受した政治家について、政治的道義的責任があるとして氏名公表を行いたいとの提案を行った。これは政府が自らの判断で灰色高官名を公表せず、国会の要請に基づいて灰色高官の氏名を公表する形として、法務、検察当局からも受け入れ可能なものとする狙いがあった。 11月4日、ロッキード問題特別委員会は秘密会を開催し、稲葉法相は時効により不起訴となった政治家として福永一臣、加藤六月の二名、職務権限がないため不起訴とした政治家として二階堂進、佐々木秀世の二名の名を挙げた。この灰色高官名公表は挙党協側から強い反発を受けた。 挙党協側も体制固めを進めた。三木退陣後、福田と大平の間でどちらが次の首相となるのか決まっていなかったことが挙党協の弱点であった。結局ポスト三木は福田に一本化され、挙党協は10月21日に総会を開き、福田後継を正式に決めた。三木改造内閣は戦後初めて昭和51年度当初予算から赤字国債の発行を組み入れることを決め、また防衛費をGNP1パーセント以内とする方針とすることを閣議決定する。この二つの政策課題の決着を見届けた上、11月4日の臨時国会閉幕後、挙党協から次期首班とされた福田副総理兼経済企画庁長官は辞任した。このような動きの中、三木は12月には衆議院議員の任期満了が迫っている状況から、もう総選挙を前に党総裁を交代させる余裕はなく、全ては総選挙が決めると判断しており、挙党協の動きを気にしないようになっていった。 一方党三役は9月の両院議員総会で決まった10月開催予定の臨時党大会の扱いに頭を悩ませていた。しかし総選挙が迫る10月に臨時党大会を開催するのが非現実的であるとの認識は挙党協側も共有しており、10月29日、党三役と挙党協側の幹部が話し合った結果、臨時党大会は総選挙後、特別国会の開催前に行うことで意見がまとまり、総選挙は三木政権下で行い、総選挙後の体制は特別国会前に開催される臨時党大会で決める方針となった。11月6日の持ち回り閣議で、第34回衆議院議員総選挙を12月5日に行うことを決定し、戦後初の任期満了による衆議院議員総選挙となった。
※この「更に続く暗闘」の解説は、「三木武夫」の解説の一部です。
「更に続く暗闘」を含む「三木武夫」の記事については、「三木武夫」の概要を参照ください。
- 更に続く暗闘のページへのリンク