映画の流れ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/26 03:39 UTC 版)
和歌山県の太地町は古くから捕鯨の町として栄えてきた捕鯨基地で、その沖には、黒潮に乗ってゴンドウクジラがやってくる。和歌山県でのゴンドウクジラ漁は例年5月1日に解禁されるので、その日になると、第三十一純友丸はゴンドウクジラを捕るために出漁する。第三十一純友丸は捕鯨砲の砲手をはじめ6名の鯨捕り(捕鯨船員)が乗船する。ゴンドウクジラ漁の漁期は10月までで、それまで船員は海の上で共同生活を送る。捕鯨は危険が伴う作業であるため、6人のチームワークは緊張に満ちる。その鯨捕りは誇り高く、その顔は神聖にさえ見えた。 6月1日には、北太平洋でのミンククジラの捕獲調査があり、撮影隊も同行した。船は宮城県の港町を出港した。キャッチャーボートで行う捕獲作業や、母船にて捕れたクジラの科学的調査を行う現場とともに、母船での鯨の解体作業も行われた。クジラの解体技術は、江戸時代の沿岸捕鯨から商業捕鯨にいたるまで培われており、見事な職人技である。大きなクジラ包丁を手にしたベテランの包丁方の手慣れた、鮮やかな包丁さばきの技術で、クジラはすばやく解体されていき、区分けされていく。殺生(命を戴く)と言う食の本質がそこから垣間見えるシーンであった。 ノルウェーのロフォーテン諸島で、北海でのミンククジラ漁が解禁された。砲手は出漁前のフィヨルドの入り江で捕鯨砲を試し撃ちした。ノルウェーでは反捕鯨運動が過激化して様々な妨害が有り、親子代々の鯨捕りは生活を奪われている実情が語られた。ロフォーテン諸島では捕鯨は伝統文化であり、またミンククジラなどの鯨肉は貴重なタンパク源にもなっていた。 夏になると、千葉県の和田浦でツチクジラ漁が解禁となるので、それに合わせて第三十一純友丸は漁場を移動していた。ツチクジラは小型鯨類とはいえ10メートルを超える体長がある。捕鯨船は50ミリ砲の一番銛でクジラを射止めると、慎重に二番銛で止めを刺して仕留める。確実に止めを刺すのは、そうしなければ、引き寄せた際に鯨が大暴れをすることがあるため。捕鯨とは、海の狩猟だと思わせる瞬間だ。そして、砲手は、捕鯨を通して命の尊厳を静かに語った。 私たちは生き物を殺している。でも、そのことをいつも忘れないようにしている 上記のように語る第三十一純友丸の砲手は、鯨の供養のために小さな仏像をいつも身につけていた。昔ながらの伝統的な生活と、都会から聞こえる「かわいそう」という一方的な声の狭間で、海の男たちは生きていくしかないのである。そして第三十一純友丸は、今季の捕獲枠(国による捕獲の制限頭数のこと)の最後の一頭分となるツチクジラを求めて、夜明けとともに再び大海原に出漁したのだった。
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