日本の伝統園芸における花壇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 07:26 UTC 版)
造園上の「花壇」は英語の flower bed の訳語として明治時代以降に定着したもので、それ以前から使われている「花壇」の語義とは異なる部分がある。本来の「花壇」は、もともと文字通り「花を陳列する壇」という意味であり、仏壇、祭壇等の用例があるように、「壇」とは立体的な構造物である。つまり日本の伝統的園芸における花壇とは、本来の字義通り、園芸植物の展示スペース、展示台である。江戸時代の元禄8年(1695年)に発行された伊藤伊兵衛による園芸書「花壇地錦抄」が用例として著名である。ただし、英語の flower bed の訳語的意味としての「花壇」的存在は、既に平安時代の文芸作品中に「前栽」として見いだすことができる。またその定義での日本最古の花壇遺構は、16世紀の一乗谷朝倉氏遺跡朝倉館にある。ただしそれが実際に「花壇」と呼ばれたかどうかは分からない。 屋外に設けられることが多く、主に@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}特定の古典園芸植物[要出典]を多数陳列し鑑賞するもので、目的としては風雨から観賞適期の植物を守りまた鑑賞しやすくすること、多くの品種を並べることで相乗的な美の演出効果を高めることなどである。また一部の植物を除き多くの場合は鉢植えを並べるので、良い作のものばかりを陳列でき、また一番美しく見える面を前に向けたり、高さや色彩の組み合わせも自由にできる。多くは小屋掛け式で、長方形の場所に柱を立て、屋根を設け、三方をよしずなどで囲う。前方上部を幕で飾ることもある。その中に特定の園芸植物を陳列するが、菊ならば植木鉢をそのまま並べるか土中に鉢を埋め、または土を寄せて鉢を隠す。芍薬の場合ははじめから地植えで栽培したスペースに小屋掛けする。 また、桜草の場合は5段の棚を設け、各段に7鉢から8鉢の鉢植えを陳列する。屋根には耐水性と透光性のある油障子を使い、背景には障子を立てることもある。また両袖には袖垣を添える。この他朝顔や撫子等でも花壇が組まれ、鑑賞された。 いずれにしても観賞適期が過ぎれば鉢植えは栽培場に戻され、小屋組みは解体撤去される。 この造園上の花壇との違いは、西欧の園芸が庭園術とほとんど同義であるのに対し、日本の園芸は庭園術とは別の存在として確立していることから来ていると言える。西欧の園芸でこれに近いものとしては、イギリスの古典的草花(フローリスツ・フラワー)[要出典]に同様のものがあり、劇場に見立てて「シアター」または「ステージ」と呼ばれたが、現在はほとんど行なわれない。
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