既知の物理的効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/16 20:03 UTC 版)
「パイオニア・アノマリー」の記事における「既知の物理的効果」の解説
既知の物理的効果であるが、それが軌道の予測モデルで適切に考慮されていない種々の可能性も検討されている。 最も単純な候補として未知の重力源からの重力があるが、エッジワース・カイパーベルト天体に関してはその大きさも効果もアノマリーの説明とはならないとされる。 また、何らかの重力によるとする場合には、惑星についてもその影響が及んでいなければならない。 地球や火星に関しての測定は精密で、アノマリーに対応するような要素はみられないことが明らかとなっている。 光学的にのみ観測されている遠い惑星に関しては、同様に観測にかかるだけの大きさの効果が現れているはずであるという研究もあるものの、依然確定的ではない。 アノマリーにみられるような中心に向かう一定の大きさの加速度を生むためには、例えば、少なくともある距離より先で距離に反比例した密度をもつ何らかの質量が球対称に分布すると想定すればよい。 この場合、内側の天体に影響は現れない。 通常の物質でそうしたものは確認されていないが、それが重力のみで相互作用する予測された暗黒物質ではないかという可能性も含め検討されていた。 軌道の食い違いは微弱なものであり、その検証にはさまざまな効果の詳細な検討が必要とされる。 太陽系を飛行する探査機の運動はほとんど重力で決定されるものの、精密な軌道決定のためには、その相対論的補正や接近した惑星の質量分布のような詳細な重力の効果はもとより、さまざまな重力以外の力も考慮せねばならない。 こうした中で太陽光の放射圧は近距離で重力に次ぐ支配的効果をもつ。 しかし、問題のアノマリーとは逆向きの外側へ向けて作用し、なおかつ太陽からの距離とともに逆2乗で減少する。 近距離でのデータから見積もったこの値は問題となっている距離ではアノマリーの効果よりはるかに小さなものとなり、モデルにおける見積もりが大きく誤っている可能性は除外された。 太陽風、すなわち太陽から吹き付ける陽子などによる圧力も同様に逆向きに作用し、かつその効果は小さいと見積もられた。 探査機が帯電し木星や土星の磁場によってローレンツ力を受けた可能性も検討されたが、やはり効果ははるかに小さい。 また、通信ビームによる反作用、探査機からの電波の伝達に荷電粒子が作用する太陽コロナ効果、さらに探査機の時計や受信側のディープ・スペース・ネットワークの機器の不安定性による影響も小さなものと見積もられている。 この他にも、接近した惑星からの放射光、惑星間磁場、衝突した粒子による抵抗、探査機のスラスター噴射のモデルの正確さ、推進剤タンクや原子力電池・蓄電池からのガス漏れによる予期せぬ推進力、探査機との交信時の地球電離層や対流圏の電波に対する影響、電波の円偏光と探査機のスピンによる周波数変動、地上送受信施設の正確な位置や変動、天体暦の正確さなど様々な可能性が検討された。
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