新新訳源氏物語
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このようにして形成されてきた「源氏物語礼讃」は、1938年(昭和13年)10月から1939年(昭和14年)9月にかけて金尾文淵堂から出版された与謝野晶子の『新新訳源氏物語』の各帖の冒頭をかざることとなった。なお、『新新訳源氏物語』には、和歌に「晶子」との署名が付されていることから『源氏物語』の原文に存在するものではなく与謝野晶子が付け加えたものであることは分かるものの、これらの和歌を書き加えた理由も、これらの和歌が『明星』や『流星の道』に掲載されていたものとほぼ同じものであることの説明も一切ない。また『新新訳源氏物語版』では 『新新訳源氏物語』において夕霧巻は昭和14年2月刊行の第4巻の「夕霧」と昭和14年6月刊行の第5巻の「夕霧二」に分けて収録されており、それぞれの巻頭に異なる和歌が付されている。 本文の存在しない雲隠巻のためにも和歌が作られている といった違いがあるため、他の版より和歌の数が2首多く、全部で56首となっている。 初版では、各帖の冒頭に晶子自筆の和歌が記された色紙の写真が掲載されており、第3巻以降では色紙の次の頁に活字の形で和歌が掲載されている。色紙に記された和歌にはルビは一切記されていないが、翻刻された和歌には『新新訳源氏物語』の本文と同様総ルビとなっている。また色紙に記された和歌と翻刻された和歌は同じであるが、ただ一箇所、匂宮巻において「春(はる)の日(ひ)の光(はかり)の名残(なごり)花(はな)ぞのに匂(にほ)ひ薫(かを)るとおもほゆるかな」が色紙では「薫るおもほゆるかな」となっており、「と」一文字が欠けている。 この『新新訳源氏物語』が完結したことを記念して1939年(昭和14年)10月に開催された「新新訳源氏物語完成記念祝賀会」において『源氏物語礼讃』として参加者に配布された印刷物に収められた。 『新新訳源氏物語』は晶子の没後、さまざまな出版社から刊行されたが、その本文は細かな部分でしばしば晶子自身によるオリジナル版の『新新訳源氏物語』とは異なっている。角川文庫版ではその本文について「新字新かなに直した」と注記されているが、「中には文法的におかしかったり意味が変わってしまったりしているような「改竄」と行っていいような改悪もある」との批判もある。また『新新訳源氏物語』は、角川文庫版以外にも三笠書房、日本書房、河出書房(河出書房新社)などから出版されており、漢字表記や仮名遣い等の手直しをそれぞれ独自に行っているが、これらにもそれぞれ問題が含まれていると指摘されている。
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