採石問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 05:14 UTC 版)
1980年代後半から、鳥海山の南麓にある吉出山で業者による採石が始まっていたが、近年、大規模な掘削が行われるようになり、山の景観が大きく損なわれ、水資源の汚染も懸念されたため、遊佐町の町民等が事業の中止を求める事態となった。 現在、採石を行っているのは川越工業(秋田県にかほ市)一社のみであり、同社が所有する臂曲(ひじまがり)地区で行われている採石が問題視されている。 同社の採石事業についての山形県認可の期限が2013年9月12日までだったため、同年5月中旬から、JA庄内みどり遊佐地区農政対策推進協議会や町環境保全会議により、採石に反対する署名活動が行われ、同年7月3日と25日に、山形県に対し、事業の不認可の要請とともに、56426筆(うち遊佐町民10427筆)の署名が提出された。 こうした採石反対運動に対し、山形県は、採石法による申請については、同法の第33条の4に定める基準(公共の福祉に反するとき)に該当すると認められるときは認可してはならないこととされている旨を述べたうえで、2013年4月に山形県水資源保全条例が制定されたことにも触れ、事業の認可申請書には地元との協定書を添付するよう指導しており、問題となっている事業についても厳正に審査するとの見解を示した。 川越工業は2013年7月に採石事業認可の再申請を行い、8月に町民説明会を実施。同社は臂曲地区の約9 haの土地で採石を続ける意向を示し、標高320 m以上で安山岩約33万トンを採石したいとした。同じ8月、同社は、遊佐町女鹿地区(鳥海国定公園に含まれる)での採石事業において、自然公園法の規定にある制限(地下2 m)に反し、地下8 mまで掘削を行っていたことが、山形県の調査で明らかとなった。なお、同社は2012年にも違法行為で行政指導を受けていた。 遊佐町は、2013年10月31日、町議会全員協議会で、川越工業が採石を行っている地区の約50 haの土地を町が購入する案を示した。町長(時田博機)は、「採石を止めるためには他に方法がない」とした。議員からは、採石のたびに土地を購入することになりかねないという声もあった。地元の住民からも、掘削で荒れた後の土地を町が購入することに反対する声が出た。町が購入の意志を示せばすぐに採石が止まるわけではなく、実際に購入されるまで採石が続くという点にも、反発があった。なお、川越工業は土地の売却に前向きな姿勢を示していた。 2013年11月29日、遊佐町と川越工業は、採石場の土地を町が買い取ることを前提とした協定を締結した。 2013年12月3日、山形県は、川越工業の採石事業について、計画どおり、2016年12月2日までの継続を認可した。 2018年8月21日、山形県遊佐町の臂曲(ひじまがり)地区で計画されている採石事業をめぐり、採取区域の拡大などの申請について山形県が書類不備を理由に拒否したのは違法だとして、秋田県にかほ市の採石業「川越工業」が県を相手取り処分の取り消しを求めた行政訴訟の判決で、山形地裁の貝原信之裁判長は県の拒否処分を取り消した。9月7日、山形県は、山形地裁判決について、控訴を断念した。
※この「採石問題」の解説は、「鳥海山」の解説の一部です。
「採石問題」を含む「鳥海山」の記事については、「鳥海山」の概要を参照ください。
- 採石問題のページへのリンク