採用/輸出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/08 09:55 UTC 版)
T-90は一輌あたり約140万ドルと安価で、性能も優れていることから、他国に対しても積極的な売りこみが行われている。かつてソ連は「モンキーモデル」と呼ばれるオリジナルよりも性能の劣る仕様で他国へ兵器を売り込んでいたが、湾岸戦争での失敗もあって、T-90については、国防上の観点から最先端技術の輸出は行わないにしても、以前のような著しい劣化仕様とはみられていない(例えば、インドのT-90はTShU-1-7シュトーラは装備していないが、エンジン出力などの性能ではロシア本国仕様を上回っている等、劣化仕様というよりは採用国のニーズに合わせたオプションの選択である)。 ロシアとインドは、2000年10月に「戦略的パートナーシップ宣言」に調印し、この中でT-90Sの約300輌(一部は回収戦車型)の売却と、インドでのライセンス生産について合意している。インドの隣国であるパキスタンがウクライナからT-80UDを導入していることから、T-90Sの導入はこれに対抗する意図があると見られている。インドの現地生産型T-90Sは、「ビーシュマ」(IAST:Bhishma)の愛称で呼ばれることになる。 一方で、北朝鮮の金正日が2001年8月にロシアのオムスクにある戦車工場を訪れた際には、ロシアはT-90の売却を拒否している。このため、北朝鮮ではT-62(天馬号/天馬虎)を基に、独自に「暴風号/暴風虎」という、T-90風の戦車を開発したという報道もあるが、詳細は明らかになっていない。 このほか、アルジェリアにもT-90SAが180輌輸出される。また、インドからはモロッコに330輌のT-90Sを輸出する契約が結ばれた。この他、リビア、イラン、シリア、インドネシアに対してもロシアやインドとの契約が結ばれたとされる。高性能であるがあまりに高価なT-80U系の車輌が販売不振であるのに対し、手頃なT-90は順調に輸出が進んでいるといえる。 イラク陸軍ではM1エイブラムスの整備性や経済効率への不満や、他の武装組織への貸与が禁止されているなど柔軟な運用ができないことから、代替としてT-90Sを73台購入した。 2020年、エジプトはロシアと、エジプト国内で主力戦車T-90MSを最大500輌生産することで合意した。エジプトは武器の調達先を多様化させる方針をとっているため、順調にT-90MSの国内組立が進捗して配備されれば、エジプト陸軍はすでに保有中の米国の主力戦車M1エイブラムスとロシアの主力戦車T-90MSを同時に運用する初めての国となる。 このように当初は輸出向けの生産が主であったものの、製造本国であるロシアにおいても、次期主力戦車として予定されていたT-95の開発が中止された一方で、現用のT-80Uもコストの高さと装備の複数化の弊害を理由に生産・配備の中止が決定し、ロシア連邦軍の主力戦車としてT-90の本格的な配備を決定した。今後、ロシア連邦軍は主力戦車をT-72の改良型とT-90で揃える方針である。燃費はおおよそ、600m/lと思われる。
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