指紋
『まぬけのウィルソン』(トウェイン) 1830年。ミシシッピ川流域の町ドーソンズ・ランディングに、デーヴィッド・ウィルソンという若い弁護士がやって来た。彼は、細長いガラス板をたくさん用意して、町の人たちに指の跡をつけてもらい、いろいろな指紋の模様を眺めて楽しんでいた。当時は、「地球上の人間の数がどれだけ多くても、同じ指紋を持つ人間はいない」という事実が、一般にはあまり認識されていなかった。20年余りの後、ウィルソンは指紋のコレクションをもとに、殺人事件の犯人を指摘して、町の人たちを驚かせた。
『幻燈』(快楽亭ブラック) 19世紀半ば。倫敦(ロンドン)の私立銀行主人・岩出義雄が執務室で刺殺され、犯人の血染めの手形が、机上の白紙に残っていた。岩出義雄の弟・竹次郎が、銀行に勤務する男たちを2階の広間に集め、朱肉で全員の手形を取る。2台の幻燈機の1台で血染めの手形を、もう1台で朱肉の手形を投影して、指紋や掌の筋を比較する。その結果、小使(こづかい)の加藤寅吉が犯人とわかり、逮捕され処刑された。
『ノーウッドの建築業者』(ドイル) 建築業者オウルデイカーは弁護士ジョン・マクファーレンに、「君はりっぱな青年だから、私の財産を譲りたい」と言って、それに必要な書類を封蝋で閉じる時に、ジョンの右親指の指紋を採取した。その後、オウルデイカーは自分が殺されたかのようによそおって姿を消し、自宅の壁に、ジョンの血染めの指紋を押し付ける。オウルデイカーのもくろみどおり(*→〔仕返し〕4)、ジョンは殺人犯として、警察に逮捕される〔*ホームズが「指紋は偽造だ」と見抜いて、ジョンを救った〕。
『悪魔の紋章』(江戸川乱歩) 北園竜子の拇(おや)指の指紋には、渦巻きが3つあった。2つの渦巻きが上部に並び、その下に横長の渦巻きがあって、怪物の両目とニヤニヤ笑いの口のように見えた。この「三重渦状紋」とでもいうべき指紋を悪人が採取し、写真製版技術でゼラチン版を作って、連続殺人事件の現場に、いくつも押した。それを知った北園竜子は、このままでは殺人犯と見なされてしまうので、自ら拇(おや)指を切り落として川へ棄てた。しかし彼女は悪人に捕らわれ、刺殺された。
『ペルゴレーズ街の殺人事件』(ルヴェル) 列車の車室に、老紳士・若い男・その細君・「私」の4人がいた。ペルゴレーズ街の殺人事件が話題になり、警察の嘱託医である「私」は、「犯人は現場に血染めの手形を残しました。右手の指紋と、掌の特徴ある傷跡が、はっきりわかります」と言って、手形の写真を見せる。その時、列車はトンネルに入り、若い男は右手をトンネルの柱にぶつけて、手首を失った。殺人事件の犯人は、わからずじまいだった。
*殺人犯の証拠を隠すために、自分の指を切り落とす→〔爪〕4の『爪』(アイリッシュ)。
『番号をどうぞ』(星新一『ひとにぎりの未来』) エヌ氏は旅先で財布を落とした。現金もクレジットカードも失い、カードの番号も覚えていないので、買い物ができない。家へ帰る交通費もない。預金通帳・保険証・身分証明書・市民カード・納税カードなど、どれも番号がわからないので、警察でも相手にしてくれない。エヌ氏はやけを起こし、通行人をなぐり、犬を蹴とばすなどして、逮捕される。今度は警察は、番号に頼らなかった。エヌ氏の指紋をとり、ただちに身元を明らかにした。
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