抗菌薬の誤用と、細菌による耐性獲得
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 00:35 UTC 版)
「ニューキノロン」の記事における「抗菌薬の誤用と、細菌による耐性獲得」の解説
「:en:Antibiotic misuse」および「抗微生物薬耐性」も参照 広域の抗菌スペクトルを有した抗菌薬の使用は、薬剤耐性菌の拡散と、菌交代によるクロストリディオイデス・ディフィシル感染の発生を促進するため、治療ガイドラインでは、重症度の低い感染症や多剤耐性の危険因子が存在しない場合、フルオロキノロンやその他の広域抗生物質の使用を最小限に抑える事を推奨している。 ニューキノロンは市中肺炎の第1選択薬として使用しない事が推奨されている。もしも抗菌薬を使用するならば、第1選択薬としてマクロライド系抗菌薬またはドキシサイクリンを推奨する。薬剤耐性肺炎球菌ワーキンググループは、他の抗生物質クラスが試行され失敗した後、または薬剤耐性肺炎球菌が実証されている場合にのみ、市中感染肺炎の外来治療にニューキノロンを使用する事を推奨している。 ニューキノロンに対する薬剤耐性は、治療中であっても急速に進化する可能性がある。大腸菌を含む多くの病原体は、一般的に耐性獲得を示す。 特にヨーロッパでのキノロンの広範な、畜産業界での使用が、細菌のニューキノロンに対する耐性獲得に関係している。 アメリカ医療研究品質局(en:Agency for Healthcare Research and Quality; AHRQ, pronounced "ark")が研究費の一部を補助した研究によると、ニューキノロンは、2002年に成人に最も一般的に処方された抗菌薬のクラスだった。ところが、これらの処方のほぼ半数(42%)は、急性気管支炎、中耳炎、急性上気道感染など、FDAによって承認されていない病態に対する処方であった。つまり、通常はウイルス感染によって引き起こされるために抗菌薬が無効な、急性呼吸器疾患などの病状のために処方された薬剤であった。 細菌による薬物耐性獲得の機構は、主に3通りが知られている。1通り目の耐性機構として、幾つかのタイプの排出ポンプ(efflux pump)が、細胞内のニューキノロンの濃度を低下させるように作用する事が挙げられる。2通り目の耐性機構として、プラスミドを介した耐性遺伝子がDNAジャイレースに結合できるタンパク質を生成し、ニューキノロンの作用から保護して、耐性を得る。3通り目の耐性機構として、DNAジャイレースまたはトポイソメラーゼIVの重要な部位での変異が、ニューキノロンへの結合親和性を低下させ、その抗菌薬としての有効性を低下させる可能性がある。
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