抗告ができない手続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 15:07 UTC 版)
裁判手続は、結論に至るまでに様々な中間的判断を必要とする。このような中間的判断の当否は、原則として独立の不服申立てが許されず、結論そのものに対する不服申立ての手続の中で、その結論が不当であることの理由として主張すべきものとされている。中間的判断の例と、独立の不服申立ての可否は次のようになる。概して言うと、中間的判断であっても当事者の裁判を受ける権利を決定的に左右し得るほどに影響が大きいものは、抗告が許されている。 その事件をどの裁判所が担当するか。移送申立てに対する決定に対しては、抗告をすることができる(民事訴訟法21条、刑事訴訟法19条3項、家事事件手続法9条3項)。ただし、簡易裁判所から地方裁判所への移送に対しては、不服申立てを禁ずる明文がある。民事訴訟法274条2項 その事件を担当裁判官が担当して良いか。除斥・忌避の申立てを却下する決定に対しては、抗告をすることができる(民事訴訟法25条5項、刑事訴訟法25条、家事事件手続法12条9項)。 代替的紛争解決手続の存在等を理由に裁判手続の中止又はその取消しをすべきか。不服申立てを禁ずる明文がある。裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律26条3項、信託業法85条の15第3項、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律5条4項独立行政法人国民生活センター法28条3項など。 代替的紛争解決手続を民事訴訟に移行すべきか。犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律38条3項、民事訴訟法373条4項など。 弁論を分離・併合すべきか。不服申立ては許されない。 証拠調べの必要性があるか。判例が独立の不服申立てを許さないことを明らかにしている。 証拠調べの準備行為。不服申立てを禁ずる明文がある。信託法180条5項、民事訴訟法132条の8、238条など。 団体の統制に裁判所が介入するための準備・証拠収集の一部。不服申立てを禁ずる明文がある。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律293条、会社法874条、信託法46条4項、64条2項、172条3項、地方独立行政法人法101条、特定非営利活動促進法32条の5、弁理士法52条の5第2項、マンションの建替え等の円滑化に関する法律42条の3、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律103条の8など。 上訴の提起に伴う執行停止の裁判。不服申立てを禁ずる明文がある。配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律16条5項、民事訴訟法403条2項など。 仲裁的裁判。民事訴訟法375条3項など。 現状維持的裁判であって、権利関係確定の効果がないもの。民事訴訟法385条4項など。 確定裁判に対する是正申立てに伴う執行停止の裁判。不服申立てを禁ずる明文がある。国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律117条2項、120条2項、非訟事件手続法84条2項、民事訴訟法403条2項など。 記録の閲覧・謄写を許可すべきか。明文で不服申立てが禁じられることがある。人事訴訟法35条7項、犯罪被害者の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律39条8項など。
※この「抗告ができない手続」の解説は、「抗告」の解説の一部です。
「抗告ができない手続」を含む「抗告」の記事については、「抗告」の概要を参照ください。
- 抗告ができない手続のページへのリンク