抗告権否定説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 02:30 UTC 版)
一方、上記の論理展開に対しては以下のような疑義も呈されている。曰く、保護処分不取消決定によって付加される新たな不利益性はなく、それなくして人身拘束が不能な戻し収容・収容継続決定のような保護処分性を認めることは困難である。保護処分取消事件への少年法第32条の準用可能性はそれまで議論すらされたことがない。また、同条の「準用」によって拡大される抗告対象は保護処分決定のみから保護処分不取消決定まで拡大し、抗告時期は保護処分を課す原初決定のみから処分確定後の事後決定まで拡大した。法令をこのような垂直・水平両方向に拡大解釈することはもはや「準用」の域を超えている。 さらに、児相所長への送致決定(同法第18条第2項)と保護処分決定(第24条)は性質が異なるというのであれば、保護処分決定(形式的裁判)と保護処分不取消決定(それを是認する確認的裁判)もまた性質を異にする。また、抗告によって不当な処分から少年を救済するという同法第32条の根本趣旨からすれば、児相所長への送致決定への抗告許可(上記判例の抗告審決定)も保護処分不取消決定への抗告許可(本決定)も同一である。上記判例はその抗告審決定を否定したのであるから、本決定は判例抵触を免れない。 さらに、本決定は保護処分不取消決定を保護処分決定と同一視しながら、児相所長への送致決定の保護処分性を否定する。しかし実際には、児相所長への送致決定は少年への不利益性の発生契機となるものであり、不利益性を新たに付加しない保護処分不取消決定よりもむしろ保護処分性が強い。
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