手法と技術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/03 21:09 UTC 版)
個体数推定(センサス)は野生動物管理にとって欠かせないもので、追い出しカウント、ライントランセクト、標識再捕獲法など個体数を推定するさまざまな手法がある。しかし、ある自然環境内にどれくらいの対象動物が実際に存在するのかを推定することは困難を極める。よって、個体数管理では絶対的指数よりも相対的指数を重視し、ベイズ法などの統計学的手法を用いて不確実性を考慮している。こうして推定された個体数と繁殖率や死亡率に基づく自然増加率などを組み合わせることで、絶滅することなく安定的に存続できる個体数(最小存続可能個体数)や駆除できる個体数(生物学的潜在駆除数)を指標として設定する。 野生動物管理の現場では個体識別や計測、捕殺などの目的で野生動物の捕獲が要求される機会が多い。その手法には括り罠、箱罠、囲い罠、ネットガン、ドロップネット、かすみ網、麻酔銃などがあり、さらに生物種によって改良がなされ実に多種多様である。 野生動物の移動や行動圏、生息地利用を調査するためには、VHF発信器やGPS発信器を野生動物個体に装着して離れた場所から位置情報を取得するラジオテレメトリー(電波遠隔測定法)と呼ばれる技術が主に利用される。他には標識、カメラトラップ、痕跡調査などのテレメトリー手法がある。分布や生息地の空間解析にはGISやリモートセンシングといった測量技術が利用される。また、DNA抽出法やPCR法を利用すると、通常のモニタリングでは取得できない遺伝情報を入手でき、詳細な個体解析が可能となる。 野生動物を捕獲したり、やむを得ず殺さなければならない場面では、動物福祉に配慮して可能な限り野生動物に与える苦痛や影響を減らすことが共通の常識となっている。野生動物の人道的な安楽殺には、銃・家畜銃・電気ショック法・二酸化炭素ガス法・麻酔薬の致死量注射などの方法が適宜に選択される。 狩猟は趣味やレクリエーションとしての活動というだけでなく、野生動物管理にとって社会的に重要な役割を担っているとされる。無秩序な狩猟は乱獲となり野生動物を脅かすが、制御された狩猟は野生動物の個体数や行動を調整することができる。したがって、法律や条例によって狩猟可能な動物種や数、時期、場所などは明確に規定されており、ハンターが野生動物管理の人材として登用されることもある。2007年に制定された「狩猟と生物多様性のヨーロッパ憲章」のなかでは、適切な狩猟による生物多様性の保全のための原則と指針が述べられている。
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