恒星の進化との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 06:57 UTC 版)
「ハビタブルゾーン」の記事における「恒星の進化との関係」の解説
ハビタブルゾーンは主星の進化に伴って時間を追うごとに変化していく。例えば、1000万年程度しか主系列星の段階を維持しないとされる高温のO型星の場合、生命の進化が追い付かないほど急速に変化するハビタブルゾーンを持つとされている。一方で赤色矮星は、何千億年にも渡って主系列星の段階を維持するため、生命が発達して進化を起こすのに十分な時間がある惑星を持つ事ができる。しかし主星が主系列星の段階にあっても、そのエネルギー放射は時間が経過するごとに増加していき、ハビタブルゾーンを遠方に追いやってしまう。例えば太陽も、太古代の明るさは現在の75%しかなかったとされており、将来的に太陽が赤色巨星に進化する前であっても継続的に増加するエネルギー放射により、地球をハビタブルゾーンの内側に追いやるとされている。この明るさの増加に対処するために「継続的なハビタブルゾーン(Continuously habitable zone)」の概念が導入されている。これは名称の通り、恒星の周辺で絶え間なく居住することができる領域のことを指しており、そこでは惑星クラスの質量を持つ天体は、与えられた期間の間液体の水を維持することができる。一般的なハビタブルゾーンと同様に、「継続的なハビタブルゾーン」も保守的な領域と拡張された領域とに分けることができる。 赤色矮星では、わずか数分で恒星全体の明るさが元の2倍にまで明るくなるほどの大規模なフレアや、表面積の20%を占める巨大な恒星黒点が発生することがあり、ハビタブルゾーン内にある惑星の大気と水が失われてしまう可能性がある。しかし、より大きな恒星と同様に進化の過程においてその性質や放射束エネルギーを変えるので、形成から約12億年が経過するまでは赤色矮星は、その惑星上で生命の発達させるのには十分に一定の状態を保つとされている。 恒星が赤色巨星にまで進化すると、そのハビタブルゾーンの領域は主系列星の段階から劇的に変化する。例えば太陽の場合、赤色巨星に進化すると現在はハビタブルゾーンに位置している地球も太陽に飲み込まれると予想されている。しかしながら、赤色巨星が水平分枝に一旦進化すると、再び恒星全体の均衡が保たれるようになり、太陽の場合だと7–22 au離れた領域が新たなハビタブルゾーンとして維持されるとされている。この段階になると、土星の衛星であるタイタンが現在の地球と似通った温度になるだろう。この均衡状態が約10億年の間続き、なおかつ地球上の生命が太陽系の形成から遅くとも7億年後までに出現しているということを考えると、赤色巨星の周辺のハビタブルゾーン内を公転している惑星クラスの質量を持つ天体であっても生命が発達できる可能性がある。しかし、光合成のような重要な生命過程は大気に二酸化炭素を含む惑星でのみ起こり得るが、そのようなヘリウムを燃焼して均衡を保っている恒星の周囲を公転する惑星ではその多くが恒星に吸収されてしまう。さらに、2016年にRamirezとKalteneggerが示したように、その強い恒星風は惑星の大気を完全に吹き飛ばし、よりそのような惑星を居住不可能にするだろう。したがって、太陽が赤色巨星になった後でさえタイタンは居住可能にならないとされている。ただし、生命の存在が検出されるために恒星進化のこの段階で生命が出現する必要は無い。恒星が赤色巨星になり、ハビタブルゾーンが外側に広がると表面の氷が溶けて、赤色巨星になる前に繁殖していたかもしれない生命の兆候を見出すことができる一時的な大気が形成されるとされている。
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