恒星エンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/30 22:37 UTC 版)
「恒星エンジン(英語版)」を参照 恒星エンジンとは、「宇宙船を用いて人類が太陽系を脱出する」上記の方法とは全く異なり、「太陽系その物を移動させる」事により他の恒星系を目指すアイデアである。 具体的には、太陽が放出するエネルギーを利用して巨大な推進力を発生させ、太陽自体を天球上で移動させることにより、太陽系を構成する全ての惑星や小天体も太陽の重力に引かれる形で天球上を移動していくというもので、この方法を用いる場合、人類は地球に居住したまま他の恒星系を目指すことが可能となるため、一般的な恒星船が内包する乗組員の生命維持の問題はひとまず回避されることになる。 太陽系は天の川銀河内を約2億3000万年という極めて長い時間を掛けて公転しているが、これ程長い時間軸になると、公転軌道上で超新星爆発やそれに伴うガンマ線バースト、ブラックホールなどの太陽系にとって破局的な事象や巨大天体と遭遇する可能性も予測される。恒星エンジンは元々はこうした事象から太陽系全体を回避する為に考案されたもので、古くはソ連中央航空流体力学研究所のレオニード・シュカドフ(英語版)により1987年に提案された、太陽を半分程度被う半球型の超巨大太陽帆を構築することで、太陽が放射する太陽風の半分程度を受動的に推力に転換するシュカドフ・スラスターが著名であった。シュカドフ・スラスターはダイソン球を構築可能な恒星文明であれば十分に実現可能なアイデアであるとされており、シュカドフ・スラスターはクラスAの恒星エンジン、ダイソン球はクラスBの恒星エンジン(ただし、ダイソン球自体は推力は発生させないが)と分類されるようになった。 しかし、シュカドフ・スラスターは太陽風から転換された推力が太陽系惑星を破壊してしまうことを防ぐため、太陽の自転軸の両極側にしか配置することが出来ず、太陽系を自転軸の平行方向にしか動かすことが出来ない上に、太陽系全体が20メートル毎秒の速度を得るには100万年、20キロメートル毎秒の速度まで加速するには10億年を要するという加速力の鈍さも欠点として指摘された。こうした欠点を克服するために、ダイソン球からもエネルギーを得る形でより能動的に推力を発生させるクラスCの恒星エンジンの可能性が模索されるようになり、2019年には教育用YoutubeチャンネルのKurzgesagt - In a Nutshellから依頼を受ける形で、イリノイ州立大学(英語版)のマシュー・E・カプランにより、太陽風とダイソン球からのエネルギー供給により稼働する巨大なバザード・ラムジェットを用いて、500万年で太陽系全体に200キロメートル毎秒の推力を与えられるカプラン・スラスターが考案された。
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