思想・良心の自由の保障
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 13:56 UTC 版)
「思想・良心の自由」の記事における「思想・良心の自由の保障」の解説
特定の思想の強制の禁止国が特定の思想を強制し勧奨することは憲法19条によって禁じられる。 思想を理由とする不利益取扱いの禁止国が特定の思想を有することまたは有しないことを理由に刑罰その他の不利益を加えることは憲法19条によって禁じられる。また、思想を理由とする差別は憲法14条にも違反する。 沈黙の自由国が内心の思想を強制的に告白させたり何らかの手段によって推知することは憲法19条によって禁じられる。 単なる知識や事実の知不知は原則として本条の問題とはならず、裁判で本人が見聞きした事実を証言することを強制しても原則として本条に違反しない。 民事上の名誉毀損の救済方法としての謝罪広告を命じることと憲法19条の関係については学説上も見解が対立している。謝罪広告事件で最高裁は「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のもの」は憲法19条に違反しないとしたが、この判決でも田中耕太郎裁判官が「私は憲法一九条の「良心」というのは、謝罪の意思表示の基礎としての道徳的の反省とか誠実さというものを含まない」として憲法19条の問題ではないとの補足意見を述べたのに対し、藤田八郎裁判官は「国家が裁判という権力作用をもって、自己の行為を非行なりとする倫理上の判断を公に表現することを命じ、さらにこれにつき「謝罪」「陳謝」という道義的意思の表示を公にすることを命ずるがごときことは、憲法一九条にいわゆる「良心の自由」をおかすものといわなければならない」と反対意見を述べている(最大判昭和31・7・4民集第10巻7号785頁)。 私企業が従業員の採用にあたって志願者の思想やそれに関連する行動を調査することについては、私人相互間での憲法第19条の適用も含めて論争がある。三菱樹脂事件で最高裁は憲法第19条の規定等について「私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない」とし「企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであって、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない」と判示した(最判昭和48・12・12民集第27巻11号1536頁)。
※この「思想・良心の自由の保障」の解説は、「思想・良心の自由」の解説の一部です。
「思想・良心の自由の保障」を含む「思想・良心の自由」の記事については、「思想・良心の自由」の概要を参照ください。
- 思想・良心の自由の保障のページへのリンク