心神喪失および心神耗弱の例と問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/26 21:27 UTC 版)
「責任能力」の記事における「心神喪失および心神耗弱の例と問題」の解説
心神喪失および心神耗弱の例としては、精神障害や知的障害・発達障害などの病的疾患、麻薬・覚せい剤・シンナーなどの使用によるもの、飲酒による酩酊などが挙げられる。ここにいう心神喪失・心神耗弱は、医学上および心理学上の判断を元に、最終的には「そのものを罰するだけの責任を認め得るか」という裁判官による規範的評価によって判断される。特に覚せい剤の使用に伴う犯罪などに関してはこの点が問題となることが多いが、判例ではアルコールの大量摂取や薬物(麻薬、覚せい剤、シンナーなど)などで故意に心神喪失・心神耗弱に陥った場合、刑法第39条第1項・第2項は適用されない(「原因において自由な行為」論)としている。 また、殺人等の重犯罪を行った者については近年の世論の変化(厳罰化を強く望む声(特に被害者やその遺族側)という説もある)により心神耗弱として認定されることは少なからずあっても、心神喪失として認定されることは極めて稀である。特に複数の殺人や強盗殺人などの複数の重い罪を犯した者については通常の犯罪者同様に極刑もしくは無期懲役が言い渡される判例が多く、被告人の弁護側が心神喪失の認定を求めても、認定者とするか否かの判断を避けたり(精神面や発達面の障害などを十分考慮や重視をせず)責任能力を完全に認めた上で判決を行う傾向にある。また、「受け入れ先がない」「遺族が厳罰を望んでいる」として姉を殺した発達障害(アスペルガー症候群)の男性に対し求刑を上回る懲役刑を言い渡した例もある。 心神喪失と認められると、不起訴になるか、起訴されても無罪となる、ということに関しては、社会的に抵抗感を抱く向きもある。2001年6月8日に大阪教育大学教育学部附属池田小学校で起こった事件(「附属池田小事件」)の犯人が、精神分裂病などの精神疾患を理由として10回以上に渡って不起訴(一部を除く)となった経歴の持ち主であったことも報道された。この事件をきっかけに、心神喪失と認められた者に対する処遇への、司法の関与が必要との考え方が注目され、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」が制定され、保護観察所に配置された社会復帰調整官(精神保健福祉士)を中心に、医療観察を行う枠組みがつくられた。
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