形態学の諸分野
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/09 12:36 UTC 版)
「形態学 (生物学)」の記事における「形態学の諸分野」の解説
形態学的な研究は、さまざまな目的で行われる。目的に応じて、形態学の異なる分野が形成されてきた。 たとえば、「比較」「機能」「実験」という分け方が考えられる。 比較形態学においては、各個体が持つ形態の多様性の中から基本的な型を、すなわち分類群固有の形質を識別する。また逆に、特徴的な形質に基づき、分類群を導き出すこともある。 機能形態学の趣旨は、特定の機能に着目し、それに関する構造を調べることにある。生理学、生化学、薬理学とも密接に関わっているが、この研究で注目するのは、生物個体の、特定の機能に関係している部分である。そのため、構造は、特定の機能(つまりその生物の生態へ適応)に特殊化されたものとして理解される。全体性、あるいは、個別の機能間の相互作用についての記述があるときは、構造形態学(de:Konstruktionsmorphologie)的記述といわれる。 実験形態学では通常、器官の発達について研究する。形態の継時的変化における意味での発生規則を究明するために、環境条件などを変更した実験を行う。(通常のものと、障害を与えたものの発生プロセスを比較し、相違の原因を確認する) このように、形態学の研究は、きわめて多様な分野の基礎になりうる。形態や、発達中の変化についての客観的な記録は、現代の生物学において生物の分類の基礎になる。従って形態学は、分類学や進化論の基礎を作る(系統学を参照)。だが、古い時代の形態学者は、彼らが体系化した生物分類が、共通祖先からの枝分かれの結果であるとは考えなかった。そのかわり、既知の分類群に対し、「理想像」あるいは「原型」を当てはめることができるかどうかが問題になった。生物の中に、プラトンのイデア論的な理想像をも見ようとしたのである。このような姿勢の著名な例は、既知のすべての植物形態から、一つの理想的典型「原植物(独:de:Urpflanze)」を推測しようとするゲーテの試みである。この考え方は今日では、近代の進化生物学への第一歩と評価されており、歴史的には「理想主義の形態学」とまとめられている。 一方、観察する箇所が、生物の内部か外部かによっても、細分することができる。 解剖学は、生物の構造や、内部器官についての研究である。 生物の外観に対する研究はエイドノミー(英:en:eidonomy)と呼ばれ、生物学の歴史の初期では主流だったが、収斂進化の影響もあり、もはやほとんど研究されていない。外観から得られる情報は、解剖で得られる情報よりも乏しいので、外観の研究は通常、形態の研究の一要素として、系統学の分野などで行われる。
※この「形態学の諸分野」の解説は、「形態学 (生物学)」の解説の一部です。
「形態学の諸分野」を含む「形態学 (生物学)」の記事については、「形態学 (生物学)」の概要を参照ください。
- 形態学の諸分野のページへのリンク