形態及び生活環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/05 14:12 UTC 版)
本動物の生活環については完全に明らかにされてはいない。わかっている範囲でこれを示す。 もっともよく研究されているコチョウザメ (A. ruthens)を宿主とした場合では、宿主の卵巣の発達段階と寄生者の発生段階とが密接に繋がっている。最初に発見されるのは産卵直後の6月、卵巣の中でである。まず2核を有する径100㎛の卵細胞として発見されると、7月までには外側を膜に包まれた細胞塊が形成され、これは桑実胚に当たると考えられる。これはほぼ1年かけて発達し、外側の膜は内側の胚と癒合する。卵黄形成が始まる頃には幼生はプラヌラのような姿になり、その大きさは1mmほどになる。この幼生は卵黄形成と共に細長く伸びてストロン型の幼生になる。この幼生は出芽して伸び、9月にはその内側に触手が形成される。9月から冬を通して幼生は卵黄を吸収し、春の産卵の前にストロンでは内外の層が裏返るようにして触手が外側に出る。 産卵によって寄生された卵は健全な卵と共に体外に出る。ここから本種の自由生活が始まる。春の産卵前に、魚卵の内部でストロンは裏返り、触手や外胚葉が外側に出て、正常な位置関係を作り上げることになる。これは、人為的に採卵が行われた場合にも起こる。産卵によって寄生者のストロンは健康な卵とともに水中に放出され、ここからこの種の自由生活の生活環が始まる。水中に入ると、ストロンは分断し、個々に単独のポリプに分かれる。これはストロンの延長方向に対する分裂によって行われ、触手の数は分裂までに倍増している。口が形成されると、ポリプは活発に摂食活動を行い、ウズムシ類や貧毛類などを飲み込むように食べる。 6月に入ると、ポリプには2種の生殖巣が形成される。最初は雌のそれ、次いで雄のそれ。個々の個体はその片方だけを持つ場合と、両方を持つ雌雄同体の個体がある。 自由生活の本種は淡水性の底生動物として振る舞う。餌を捕らえるには8本ある長く細い感触手(sensory tentacle)を使い、これはまた防衛にも使われる。基質に付着するには4本ある太い保持触手(supporting tentacle)を用い、この触手はまた、この動物が基質上を移動する際にも用いられる。大きさはヒドラ並みだが、ヒドラのような放射相称ではなく、2軸相称の形をしている。その体制はクラゲとポリプの両方の体制の特徴を併せ持つ。傘や感覚器がないことではポリプに似るが、触手で移動し、水中に流されて宿主に到達することが出来る。これは自由生活をしながら横分裂によって無性増殖を繰り返す。成熟後はポリプは死亡する。 総括すると、ポリポジウムの生活環には2つの世代の入れ替わり、世代交代がある。つまる寄生の世代と自由生活の世代である。そのどちらでも無性生殖が行われ、またまた自由生活の世代では有性生殖も可能である。これは刺胞動物に見られるクラゲの世代とポリプの世代の世代交代によく似ている。
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