義務的管轄権
別名:義務的な管轄権、強制管轄権
英語:compulsory jurisdiction
国際司法裁判所(ICJ)が管轄する国家間紛争において、他国からの提訴に応じ、また国際司法裁判所の命令を受諾するという権利義務。
義務的管轄権は、当事国が受諾する旨を国際的に宣言することで生じる。義務的管轄権の受諾を宣言した場合、他国から提訴された場合には応訴すること、および国際司法裁判所が下した判決に服することが、義務として生じる。
義務的管轄権は、国が自発的に宣言しない限り発生しない。また、義務的管轄権を宣言していない国には、国際司法裁判所への提訴に応じる義務もない。
日本は1958年に義務的管轄権の受諾を宣言している。韓国はこの宣言を行っておらず、竹島問題における国際司法裁判所への提訴に応じない姿勢をとっている。
外務省国際法局の資料によれば、2012年8月時点で義務的管轄権の受諾を宣言している国は67ヵ国であるという。
関連サイト:
国際司法裁判所(ICJ)の概要 - 外務省 国際機関人事センター
国際司法裁判所(ICJ)について - 外務省国際法局国際法課
強制管轄権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 21:10 UTC 版)
紛争当事国がICJに事件を付託したのち、相手方当事国がICJに事件を審理する管轄権が存在しないとする抗弁を行ってICJがその抗弁を認めれば、事件の本案について審理は行われない。ICJの管轄権は紛争当事国の合意に基づいて初めて設定可能な任意管轄が原則であり、強制管轄が認められるのは例外的な事例にあたる。そのような例外的に認められる強制管轄権の中でも特に重要な方式が選択条項である。 国際裁判においては、あらかじめ裁判所の管轄を義務的であると宣言していた国家間で強制裁判管轄権が設定されることがあり、そのような宣言を可能とする条約上の条項を選択条項という。ICJにおいてはICJ規程36条2項がこの選択条項にあたる。そのICJ規程36条2項を以下に引用する。 この規程の当事国である国は、次の事項に関するすべての法律的紛争についての裁判所の管轄を同一の義務を受諾する他の国に対する関係において当然に且つ特別の合意なしに義務的であると認めることを、いつでも宣言することができる。 a.条約の解釈 b.国際法上の問題 c.認定されれば国際義務の違反となるような事実の存在 d.国際義務の違反に対する賠償の性質又は範囲 — ICJ規程36条2項 強制管轄権が設定される場合には、他国に事件を一方的に付託された国には応訴義務が生じることとなる。このような選択条項は、紛争当事国による任意の付託を原則とする国際裁判を、裁判所が一般的な強制管轄権を有する国内裁判に近づけようとするものであり、常設国際司法裁判所の時代に導入された。もし仮にすべてのICJ規程当事国が宣言を行っていれば、一方の当事国の提訴があったときは他方の当事国の同意なしにICJは管轄権を行使できることとなり、国内裁判における裁判所の管轄権と同様の管轄権をICJも行使できるはずであった。しかし国際司法裁判所にこのような強制管轄権を認めることに対しては根強い反対意見もあり、ICJの選択条項受諾宣言を行っている国は一部に限られている(右地図も参照)。上記規程36条2項により同規程の当事国は、「法律的紛争」についてICJの強制管轄権を受諾することをいつでも宣言できる。「同一の義務を受諾する他の国に対する関係において」とは、宣言を行った国同士では同一の義務を受諾している範囲内においてICJの強制管轄権が設定されるとする相互主義を規定したものである(#相互主義参照)。
※この「強制管轄権」の解説は、「選択条項受諾宣言」の解説の一部です。
「強制管轄権」を含む「選択条項受諾宣言」の記事については、「選択条項受諾宣言」の概要を参照ください。
- 強制管轄権のページへのリンク