帆走コルベット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 17:53 UTC 版)
「コルベット」という単語の語源は、籠を意味するラテン語のcorbisであると言われている。ローマの貿易船は見張りのため檣頭に籠を吊るしていたことから、corbitasと通称されていた。例えば中世には、コルビスタ(corbista)は1本マストのガレー船を指していた。特にスペイン語ではBとVの発音は混同されやすかったことから、これらがフランス語に導入される際にcorvetteと変化したものと見られている。 近代軍艦としての「コルベット」の元祖とされるのは、フランス海軍が1674年に進水させた大型バーク(barque longue)である「ラ・コルベット」である。これは小型のフリゲートというべきもので、従来の艦は4ポンド砲4門を積んでいたのに対し、同艦では8門が搭載されていた。17世紀最後の10年間でコルベットは大型化と砲の増備を重ねていった。1696年、フランス海軍は「コルベット」を大型バークの下位分類として採用し、1746年には大型バーク全体を表す艦種名に変更した。 上記のように、「コルベット」とはもともと貿易船を表していたものが軍艦へと導入された名詞であることもあって、イギリス海軍のスループと同様に、非常に広範な艦種を表すようになっていった。18世紀には、戦闘コルベット(Corvettes de Guerre)、通報コルベット(Corvettes Aviso)、そして貨物コルベット(Corvettes de Charge)の3種類があり、例えば戦闘コルベットはイギリス海軍の20~24門艦におおむね匹敵した。等級制度では6等艦に相当し、艦隊決戦ではフリゲートと同じく戦列には加わらず、通信の中継や損傷艦曳航などの補助的任務にあたっていた。また上甲板の上の構造物がほとんどなく、風通しが良かったこともあって、熱帯・亜熱帯の植民地にも多く配備された。強力ではないが一応の戦闘力も備えていることから、対反乱作戦や砲艦外交でも使い勝手が良かったものとみられている。 このように大陸ヨーロッパでは「コルベット」というカテゴリ名が普及していたのに対し、イギリス海軍では依然として「スループ」が広く用いられていた。これらの艦では海尉が艦長として任ぜられていたが(海尉艦長(英語版))、1817年には24~36門搭載の大型スループがフリゲートに類別変更され、勅任艦長(海佐艦長)が艦長として任ぜられるようになった。これらの艦は当初は「ドンキー・フリゲート」と蔑称されていたが、後に「コルベット」と称されるようになり、1854年には正式の艦種名として採用された。しかしこの頃には舶用蒸気機関が普及し、機帆船の時代となっていた。このように帆から推進機に変わっていく流れの中、帆装に基づく従来の類別法とは異なる名称が望まれるようになり、1878年、イギリス海軍では、既存のフリゲートとコルベットを巡洋艦に類別変更した(旧来の艦種呼称も1880年代までは公文書で用いられていた)。
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