小型衛星放出事業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 04:28 UTC 版)
きぼうは、国際宇宙ステーション (ISS) 内に持ち込まれた超小型衛星を自身のロボットアームを用いた小型衛星放出機構(J-SSOD)により軌道上に放出することができる。これによりロケットで直接軌道に投入するより小さい衝撃で、より多くの超小型衛星を効率的に軌道上に投入できる。 通常のロケットでの打ち上げと比べ、放出される衛星はISSへの物資輸送機の船内貨物として打ち上げられるため、ソフトバッグと呼ばれる緩衝材で包んで輸送用バッグ(CTB)に入れられた後に輸送機でISSへ運ばれる。これにより緩衝材・輸送用バッグ・輸送機与圧室・フェアリングの4重保護となり、打ち上げ時の環境条件が自動車の荷台と同じ水準にまで緩和されるため、衛星開発の負担軽減に繋がっている。 きぼうを利用した衛星放出の検討が始まったのは2010年頃で、アメリカの大学が開発していたcubesat放出装置の設計をもとにJ-SSODは開発されている。初めて放出されたのは、2012年10月4日に明星電気のWE WISHと和歌山大学・東北大学のRAIKO (雷鼓)、同10月5日に福岡工業大学のFITSAT-1(にわか衛星)・他海外衛星のF-1・TechEdSatの計5機で、星出彰彦宇宙飛行士が操作するきぼうのロボットアームにより世界で初めて宇宙空間に衛星を放出した。 当初はCubesatのみの放出で、最大6U分の放出能力しかなかったが、2016年4月27日に初めて50kg級衛星用の搭載ケースを用いて50kg級超小型衛星が放出されている。2016年12月9日には、今までの3Uサイズの衛星搭載ケースを左右に2本あった6U対応のものを2段重ねにした、計12U対応の新型放出機構をHTV6号機でISSに輸送され、2017年1月16日の衛星放出時に初めて使われている。少しずつ衛星放出能力が増強されているが、「きぼう」のエアロックの大きさを限界まで活用すれば、最大で約300kgの衛星を放出できると見積もられている。2018年10月9日現在、これまでに34機が放出されている。 2018年2月23日に、きぼう利用戦略に基づくきぼう利用事業の民営化の第1弾として、2024年末までの契約で2023年度までに自立的運営を目指し技術移転を行う条件で超小型衛星放出サービス事業者の募集を開始し、2018年5月29日に応募があった5社の中からSpace BDと三井物産が選ばれている。 今後の計画では、2018年に6Uサイズの衛星を放出可能にし、2019年に24U相当、2020年には48U相当に能力を向上させた衛星放出機構を開発し運用する予定で、2020年以降は年間100Uの衛星放出を構想している。この年間100Uの内、民間の割合が7割に、JAXAが3割になる予定である。なお、この小型衛星放出機構(J-SSOD)を利用した衛星放出事業のJAXAでの税込み標準価格は、1Uが300万円、2Uが500万円、3Uが800万円、50kg級が1億400万円となっているが、民間事業者での価格は未定となっている。
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