対艦防御思想 (集中式)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:51 UTC 版)
「大和型戦艦」の記事における「対艦防御思想 (集中式)」の解説
大和型戦艦は史上最大の戦艦だが、それでも建造前に中村良三(大将)艦攻本部長から「最小の重量をもって威力最大なる艦船たらしむるには船体、兵器、機関および艤装品の各細部にわたり、容積の縮小と重量の軽減をはかるを要す」と指示されている。技術者の努力と技術的洗練によって世界最大の主砲と防御力を持つわりには小さく作られた艦とされ、福井静夫などの技術者もそれを誇りとしていた。 大和型戦艦の船体主要部は、距離2万-3万mから発射された自艦の46cm砲の砲弾に耐える防御力がある。だが艦全体を重装甲で固めると速力や復原力性能を低下させるため、現実的ではない。従って戦艦は、重装甲で守るバイタルパート(主要防御区画:主砲、火薬庫、発令所、機械室、缶室、発電機、舵取機室、等)と、間接防御で妥協する部分の二つの部分で構成されている。大和型戦艦はバイタルパートを最小化するという集中防御方式で設計されている。これはアメリカのサウスダコタ級やフランスのダンケルク級と同じ設計思想で、横から見たシルエットは前者に、内部構造は後者に似ている。これにより主要防御区画は水線長に対する53%に抑制され、防御の冗長化を回避している。従来日本戦艦は、長門型戦艦63.15%、扶桑型戦艦65.0%、加賀型戦艦55.0%である。主要防御区画の防御力は、砲戦距離2万 - 3万mで自身の46cm砲に耐えうるものとされた。なお防御にあてられた重量と艦の全重量との比較は、大和が34.4(新造)、長門が30.6(新造)であった。 水密区画数は扶桑型戦艦の737区画、長門型戦艦の1,089区画に対し1,147区画と、排水量の増加の割に区画数は増えていないが、これは長門型においては大改装時にダメージコントロールの思想が取り入れられたのに対して、本型は設計時点から検討され、注排水システムも装備したためである(注排水システムについては後述)。また主要防御区画も最小限にまとめられ、そこだけで必要浮力が確保できた。主要防御区画以外がすべて破壊、浸水しても、なお艦舷が水面上を保つということである(リドルド状態も参照)。
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