対日圧力を生んだアメリカの世論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 16:50 UTC 版)
「前川リポート」の記事における「対日圧力を生んだアメリカの世論」の解説
当時の日米双方の世論において、以下の様な誤った認識が広がっていた。 今やアメリカの「経済力」は低下し、日本の「経済力」に一歩を譲る様になった、或いはそうなる日は近い。 アメリカは経済的に日本に依存し過ぎている。 冷戦が終結すれば(当時1986年はソ連の崩壊前であり冷戦中)、日本の「経済力」(及び金融力やハイテクパワー)は崩壊したソビエト連邦の軍事力に代わる最大の脅威である。 経済学者の小宮隆太郎は、「経済力」とは何ぞやと批判を呈しつつ、アメリカにおける日本に対する強い風当たりが生まれた原因として次のような事情を挙げている。 アメリカの二国間貿易収支赤字の絶対額では、その対全世界の貿易収支赤字が増大した過程で、対日赤字がずば抜けて大きかった。 経済の面で、第二次世界大戦後の40余年の間に日本経済の高成長率で規模を増大させており、「覇権国」のアメリカに対して日本が「挑戦者」であるかのように見えた。 日本が、いくつかの「重要産業」(鉄鋼・自動車・工作機械・民生用電子機器・通信機器・半導体等)で、アメリカと競合して優位に立つまでに至りアメリカの産業に大きな打撃を与えてきた。 日米安保体制下において、防衛費の負担が軽い日本は、それが重いアメリカから見れば、アメリカの核の傘にタダ乗りをして狡猾に漁夫の利を得ているように映った。 日本は欧米のキリスト教文化の枠外で近代化・工業化に成功した最初の国であるために、欧米系の文化・価値基準から見て、日本と日本人が理解し難く日本の政治・政策・制度や経済システム・社会慣習・商慣行等が欧米のそれとは異質に映った。 アメリカ国債の入札に対する日本の機関投資家のシェアの高まりに関連して、日本資本への資金への依存度を巡る誤解が拡がった。 1989年9月27日のソニーによるコロンビア ピクチャーズの買収や同年10月31日の三菱地所によるロックフェラー・センターの買収によって、アメリカ人が大切に思っている企業をバブル景気に湧いていた日本資本が軒並みに買い占めて行くという危機感が拡がった。 日本の銀行がアメリカへ急速に進出しシェアを高めていった。 電子機器の重要性がクローズアップされた湾岸危機の際に、一部の重要な電子機器やその部品の供給でアメリカの対日依存度が高いことが認識されるようになると共に、同危機での日本の態度や行動がアメリカ人には非協力的であると映った。
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