宿主域と伝染
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/25 08:16 UTC 版)
「ウエストナイルウイルス」の記事における「宿主域と伝染」の解説
ウエストナイルウイルスの自然宿主は鳥類とカである。特に鳥類においては、300種以上の鳥が感染することが判明している。この内、アメリカガラスやアオカケス、キジオライチョウを含む複数の鳥類は感染によって死亡するものの、その他の鳥は感染しても死亡しないことが判明している。また、コマツグミやイエスズメが、ヨーロッパや北米の都市において最も重大な保因宿主であると考えられている。この他に、北米に生息する鳥の中では、チャイロツグミモドキやネコマネドリ、ショウジョウコウカンチョウ、マネシツグミ、モリツグミに加え、ハト科の鳥などの抗体保有率が高いことも判明している。 ウエストナイルウイルスは多くの種類のカから検出されているが、感染拡大の要因となるカは、アカイエカ(学名:Culex pipiens)やネッタイイエカ(英語版)(学名:Culex quinquefasciatus)、Culex salinarius、Culex nigripalpus、Culex erraticusなどが含まれるイエカ属である。日本ではアカイエカやネッタイイエカの他に、チカイエカやヒトスジシマカが重要な媒介蚊となる可能性があると指摘されている。また、感染実験は軟ダニ(英語版)を媒介者として用いることで実証されているものの、自然感染ではベクターとして役割を果たす可能性は低いとみられている。 ウエストナイルウイルスの宿主域は非常に広く、ヒトやヒト以外のサル目の動物に加え、ウマやイヌ、ネコなど少なくとも30種以上の哺乳類が感染する可能性があることが知られている。しかし、ヒトやウマと違い、イヌやネコは感染しても症状を発症しないとみられている。哺乳類以外では、ワニやヘビ、トカゲ、カエルといった爬虫類や両生類の動物も感染することが判明している。哺乳類はウイルス血症となる可能性が比較的低く、別のカに感染させることはあるが、そのカが感染源となることがほとんどないため、終末宿主であると考えられている。また、一部の鳥も終末宿主であることが判明している。 ウエストナイルウイルスは、鳥とカの間で感染環を形成することで伝染するウイルスである。また、直接的な接触や感染した鳥の死骸の捕食、汚染水を飲むといった行為により感染することもある。さらに、メスのカとその子孫の間で垂直感染が起こることがあり、ウイルスが越冬する上で重要なメカニズムである可能性がある。地方では単に鳥とカの間で感染サイクルを形成するものの、都市部ではウイルスに感染した鳥から血を吸ったカがヒトを刺すことで感染させることがある。この感染には鳥とヒトの両方に吸血嗜好性を持つカが必要であり、こうしたカのことをブリッジベクターと呼ぶ。カを介さない感染経路として、妊婦が感染したことによる胎児への感染や授乳、輸血、臓器移植等による感染例等が報告されているものの、これらの感染が起きることは稀であると考えられている。鳥とは異なり、上記以外ではヒト-ヒト感染は発生しないと考えられている。
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