家畜化の条件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 02:41 UTC 版)
進化生物学者ジャレド・ダイアモンドの著書『銃、病原菌、鉄』(2013年刊、原著1998年刊)によると、家畜化に適した動物(大型哺乳類)の条件は次の6つを満たすものである。 飼料の量 多くの種類の食料を進んで食べ、また生態ピラミッドの下位に位置する飼料(トウモロコシやオオムギ)を、そのなかでも特にヒトが食べられない飼料(秣〈まぐさ〉や牧草など)を主食とする動物は、飼育に多くの出費を必要としないため、家畜化されやすい。純粋な肉食動物は、たくさんの動物の肉を必要とするため、家畜としては不適であるが、例外として、残飯で飼育できるうえに害獣を狩れるものは家畜化される場合がある。 速い成長速度ヒトより速く成長して繁殖可能になる動物は、ヒトの手で繁殖させることにより、ヒトにとって有用な性質を具える家畜へと比較的短期間で変容させることができる。一方で、ゾウのような大きな動物は、役畜として有用になるまでに長い年月を要する点で、家畜には不向きである。 飼育下での繁殖能力飼育下で繁殖したがらない動物は、ヒトの手で有益な子孫を得ることができない。パンダやアンテロープなど、繁殖時に広いテリトリーを必要とし、飼育された状態では出産が難しい動物は家畜にならない。 穏やかな気性大きくて気性の荒い動物を飼育するのは危険である。例えば、アフリカスイギュウバッファローは気まぐれで危険な動物である。アメリカのペッカリーやアフリカのイボイノシシとカワイノシシ(英語版)はイノシシの一種であり、家畜化されたブタと似たような部分があるものの、飼育が危険であるために家畜化は成功しなかった。 パニックを起こさない性格驚いたときにすぐに逃げだすような性格の動物も飼育しておくのが難しい。例えば、ガゼルは素早く走り、高く跳ぶことができるので、囲まれた牧場から簡単に逃げ出せる。パニックに陥りやすいという点では家畜化されたヒツジも同じ条件ではあるが、群れをつくる習性がとりわけ強いため、これをヒトやヒトに指図されたイヌによって利用され、群れ全体を制御されている。 序列性のある集団を形成する群れを形成する動物には、個体間で序列性を作り、自身よりも序列上位の個体の行動に倣う習性を、もつ種ともたない種がいる。ウシやウマ、ヒツジなどは前者の典型であり、集団のヒエラルキーの頂点にヒトを据えることで容易に集団のコントロールが可能になるが、同じく群れを作るシカ(トナカイを除く)やレイヨウなどははっきりと集団内の序列を作ることがない。北アメリカ原産のビッグホーンはヒツジの原種であるムフロンとよく似た特徴を具えているが、この一点において家畜化されることはなかった。
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