大同と電力国家管理
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1938年6月、電気事業者が日本発送電に出資すべき設備の範囲が以下のように確定した。 送電設備:主に最大電圧100kV以上のもの。 変電設備:主に最大電圧100kV以上の送電設備に接続するもの。 火力発電設備:出力1万kW超のもの。 この決定に基づき、五大電力各社を含む33の事業者を対象に送電線亘長約7,200km、火力発電所34か所(出力約182万7,000kW)、変電所95か所に及ぶ発送電設備の日本発送電への現物出資が指示された。 「日本発送電株式会社法」の規定により大同電力が出資すべきと命ぜられた設備は、1938年8月11日付の告示によると以下の通りである。 送電設備:56路線154kV送電線:7路線 77kV送電線:33路線 55kV送電線:3路線 22kV送電線:6路線 11kV送電線:7路線 変電設備:18か所東京・塩尻・須原・犬山・大阪・八尾の各変電所など 火力発電設備:4か所毛馬・春日出第一・春日出第二・安治川の各発電所 上記強制出資設備の簿価は約1億231万6000万円に達し、1938年上期末(5月末)時点の固定資産のうち43.2%を占める額であった。出資額だけを見ると、大同と同様電力卸売りを主体とする日本電力が固定資産のうち40%の出資を命ぜられており、電力国家管理の影響は日本電力と同程度ということになるが、国家管理の実施により大同電力は解散へと向う一方日本電力は存続が可能であった。命運を分けたのは、営業に占める一般供給の割合の差であった。日本電力が電気事業者への供給を主体としつつも全供給量の4割強を一般供給に振り向けていたのに対し、大同電力の一般供給は全供給量の1割に過ぎなかったのである。残りの9割を占める電気事業者への卸売りは電力国家管理に伴い大部分が日本発送電へ移り、さらに料金が低く抑えられる見込みであったから、大同電力にとって国家管理の実施は営業基盤の喪失を意味した。 また、これらの強制出資設備は工場財団として社債の担保に入れられており、外債の関係上国際関係にも配慮する必要性から、工場財団所属設備のうち強制出資対象から外れていた残余設備とともに社債の元利支払い義務も日本発送電へと継承させるのが穏当と考えられた。このため政府は「電力管理に伴う社債処理に関する法律」を大同電力に対して適用し、12月3日、社債元利金支払い義務の継承および工場財団所属残存電力設備の強制買収について通知・命令した。強制買収の対象となった設備は以下の通りである。 水力発電設備:14か所寝覚・桃山・須原・大桑・読書・賤母・落合・大井・笠置・串原・時瀬・笹戸・旭・西勝原の各発電所 送電設備:8路線 変電設備:8か所 配電設備ほか 政府当局の方針は、工場財団所属設備の強制買収からさらに踏み込み、大同電力の資産負債一切を日本発送電へ包括的に継承させる方針となっていたため、社債継承および強制買収の通知とともに、大同電力は強制出資・強制買収両方の対象から漏れた残余資産および負債をも日本発送電へと包括的に譲渡・継承すべしという慫慂を受けた。大同としては残余事業を守り副業へと進出してゆく道があったが、細々と事業を続けるよりはすべてを日本発送電へと移譲して発展的解消を遂げる方が得策である、との判断から当局の方針に従うこととなった。12月8日、重役会を開いて当局の慫慂に応じる方針を打ち出し、27日に開かれた株主総会も対応一切を取締役会に一任する旨を決議してこれを追認した。譲渡が決まった残余資産のうち事業設備は以下の通り。 営業設備:本社・支店・営業所・出張所 水力発電設備:4か所千早川第一・同第二・滝畑第一・同第二の各発電所 送電設備:7路線 変電設備:11か所 配電設備ほか 附帯事業設備 その後の協議の結果、強制買収・残余資産負債の譲渡・継承それぞれの実行期日が次のように決定され、1939年3月16日の臨時株主総会にて手続き終了後の会社解散が議決された。 社債元利金支払い義務の継承:日本発送電設立登記の翌日 工場財団所属設備の強制買収:設立登記の当日 上記以外の設備の譲渡:設立登記の翌日 その他資産・負債の譲渡:設立登記の当日
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