外典 戯曲『王冠のダイヤモンド』
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「マザリンの宝石」の記事における「外典 戯曲『王冠のダイヤモンド』」の解説
『王冠のダイヤモンド――シャーロック・ホームズとの一夜』(おうかんのダイヤモンド――シャーロック・ホームズとのいちや、The Crown Diamond : An Evening with Sherlock Holmes)は、コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズの登場する戯曲である。短編小説「マザリンの宝石」の原作となった戯曲で、シャーロック・ホームズシリーズでは経外典 (Apocrypha) として扱われている。1921年5月2日にロンドンのヒッポドローム劇場で初演され、1958年にバスカレット・プレス社から私家版として刊行された。主演のホームズ役はデニス=ニールセン・テリー、ワトスン役はR・V・テイラーである。28回上演されただけで公演が終了し、忘れ去られてしまった。そのため、1949年にシャーロキアンのアンソニー・バウチャーが指摘するまで、短編「マザリンの宝石」との関係も知られていなかった。 戯曲の内容は「マザリンの宝石」とほぼ同じで、犯人役の名前がシルヴィアス伯爵ではなく短編「空き家の冒険」に登場するセバスチャン・モラン大佐となっていること、犯人の逮捕で話が終わりカントルミヤ卿が来訪しないことなどが異なる。初演は1921年だが、原稿・筆跡の鑑定結果やドイルの息子の証言などにより、執筆されたのは1900年代初頭であり、1903年発表の「空き家の冒険」より前であったと推測されている。戯曲の執筆後長期に渡り発表されなかった理由として、蝋人形と空気銃の仕掛けや犯人役の名前など戯曲に用いた要素を、シャーロック・ホームズの生還の物語「空き家の冒険」に使おうとしたためとされている。その後1921年5月になって初めて戯曲『王冠のダイヤモンド』が上演され、10月には短編小説「マザリンの宝石」として発表された。短編では「空き家の冒険」で既にセバスチャン・モラン大佐の名前を使用していたため、新たな犯人役としてシルヴィアス伯爵を登場させたのである。 ウィリアム・ベアリング=グールドがジェイムズ・モントゴメリーの1953年の論文を引用して示すところによると、エドガー・W・スミスが示した、「マザリンの宝石」がドイルによる偽作であるという見解が正しかったとしている。『王冠のダイヤモンド』の原稿が入っていたボール箱がドイルの息子と娘によって英国地方銀行の地下金庫から発見されたことが、1947年7月11日の新聞に掲載されている。モントゴメリーがこの原稿を読み、『王冠のダイヤモンド』と「マザリンの宝石」が全く同一のプロットであること、小説が劇の後で書かれたことはあらゆる証拠が示していると指摘している。さらにモントゴメリーはバウチャーの「この物語(「マザリンの宝石」)はドイルが自分の不人気の劇作品を救おうとして書いたのだ」「この物語は本質的に第四の壁の視点から見た一幕劇である」という指摘を「驚くべき洞察」であると評価している。
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