国土交通省への移管
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 16:54 UTC 版)
万策尽きた感の徳島県は飯泉嘉門知事が国土交通省に対し2004年、長安口ダムの国土交通省直轄ダム化に言及。徳島県議会も「長安口ダム直轄事業化促進決議」を採択して国への移管を要望した。これに対し国土交通省は2006年、平成19年度予算概算要求において四国地方整備局分の予算に長安口ダム改良事業の予算を要求することとなり、ダム事業の国直轄化が現実化した。そして2007年(平成19年)4月、渇水の危険性が示唆される中管理業務が国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所に移管された。四国では愛媛県の柳瀬ダム(銅山川)・鹿野川ダム(肱川)に次ぐ県営ダムの国直轄化である。 国土交通省は「長安口ダム改造事業」に着手することとなった。内容としては新たにゲートをダム右岸部に1門新設して洪水処理能力を強化する他、選択取水設備を設けて下流への濁水問題を解決しながら利水能力を強化するとともに、最大の問題である貯水池内の堆砂除去を図るのが主な内容である。藤田恵やまさのあつこなどのダム反対論者は、小手先の問題解決としてこれを否定、究極的には長安口ダム撤去が最良であると主張している。これに対し、当の那賀町住民達の間では、長安口ダム撤去を要望する声は極めて少数派である。 那賀川の治水整備における基本方針である「那賀川水系河川整備計画」の一環として開かれた国土交通省との住民討論会において住民達は、長安口ダムの有効活用を訴えている。そしてダム堆砂の解決が第一義であるとして美和ダム(長野県)などで実用化されている「排砂バイパストンネル」の早期着工を最も要望している。また四国電力の小見野々ダムの堆砂対策が不十分として国土交通省の行政指導を強化すべきとの声も強い。さらに、堆砂排出と並行し場所によっては140年も放置されているといわれる上流部森林の整備と林業振興を充実させて欲しいとの意見も多かった。住民達はダムに対し相当の勉強を行い、国土交通省の行政担当者と堂々と渡り合っているが、大多数はダム撤去という極論ではなく、ダムと森林整備のコラボレーションによる治水・利水対策を志向している。だが、かつての建設行政に対する不満は根強く、今後はこうした住民の声に真摯に耳を傾けながら国土交通省は那賀川の河川整備を進める必要性に迫られている。
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