呼称と表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 08:16 UTC 版)
杜氏や蔵人など酒造従業員は伝統的には酒屋者(さかやもん)と呼ばれていた。 半年ものあいだ、杜氏集団を指揮し続けるだけあって、杜氏は酒造りの技能に優れているだけではなく、部下の蔵人たち、ときには故郷に残してきたその家族たちまでも人間的に束ねていく統率力と包容力が要求される。そのため杜氏は、酒蔵の内部では、蔵元からも蔵人からも大きな尊敬の念を寄せられており、親方(おやかた)と尊称されるのが通例である。外部からの訪問者もこれに準じるのが礼節とされる。 社会的には、杜氏を表す語は、その杜氏の持つ酒造りの姿勢によって多様である。 たとえば造形を職業とする人のなかでも、他から決められた形を機械的に生産する職人タイプの人から、自らイメージしたコンセプトを具象化していく造形作家タイプの人までいるのと同じように、杜氏の世界も同じ「酒を造る」という行為に対する姿勢によってじつに多様である。 市場に送り出す工業製品として酒を生産する大手メーカーでは、杜氏を良くも悪くも製造技師としか捉えていないので、実際そのように呼んだり、製造部長もしくはチーフ・ブレンダーという肩書きを与えたりしている企業もある。 いっぽう、これはむしろ中小の酒蔵に多いが、日本酒を一つの文化もしくは工芸品と捉え、杜氏は「一人一芸、一杜一酒」と言われるほど独自な作品としての酒を造り上げていくものであるとの考えから、酒造作家(しゅぞうさっか)もしくは酒造家(しゅぞうか)と呼ばれることが多い、 なお、酒造家という表現には、杜氏だけでなく、単なるビジネスライクな生産者に留まらないで、自らの酒造りを一つの理念や思想にまで昇華させているような蔵元も含まれる。 現在では、酒造りにかかわる者は全て酒造技能者と呼ばれているが、酒造技能検定において一級酒造技能士を持つ者が杜氏となっていることが多い。
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